XP継続は是か非か? 対立するコンサルとSIerのどっちを信用する?萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(2/3 ページ)

» 2014年11月14日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

PL/Iか、COBOLか?

 別の相談でも同じようなことがあった。この会社ではかつて利用していたPL/I(汎用的なプログラミング言語)のモジュールがまだ機能する状態にあり、この環境を変えるべきかと相談された。

 筆者はソースコードまでチェックし、その結果としてPL/Iの継続利用には心配な要素がたくさんあり、同じ第3世代言語のCOBOLに比べても明らかに劣勢であったことから、「うまくソフトランディングできる移行方法を検討すべきでしょう」と提案した。

 しかし筆者の見解に対して、A社のシステムエンジニアは「そんな心配は無用。同業他社でもPL/Iをこれだけ利用している。今後も気にする必要はない」と資料をみせながら反論してきた。

 世間でも非常に有名なSIerと、筆者のような個人事業主に近いコンサルタントのどちらを信用するのか。多くの人が有名企業の作成する資料を信じてしまうのは、ある意味止むを得ないことなのかもしれない。しかし、事実が全く違うことをコンサルタントは知っている。

 ベテランのエンジニアはご存じだろうが、PL/IはIBMがCOBOLに対抗して世界中に広めようとした言語である。筆者はCOBOLもPL/Iも仕事で使用しており、その経験からPL/Iは中途半端な言語だと感じていた。ネットの用語辞典をみても、機能を詰め込み過ぎたPL/Iは実用に耐えられなくなったとある(やや言い過ぎではあるが)。

 情報処理推進機構の「ソフトウェア開発データ白書2012-2013」によれば、「開発言語一覧」においてCOBOLはJavaに次いで第2位の座にあり、全体の15.9%(Javaは28.2%)だ。3位は「C言語」である。統計資料上でPL/Iはわずか0.3%しかなく、COBOLの50分の1以下しかない。そのためプログラマーの確保が困難になりつつあり、本家IBMの最近の公開資料をみてもCOBOLを推奨している。PL/Iの解説書に至っては30年以上前のものが最新版なのだ。

 これらの事実は、熟練したエンジニアではないと、なかなかつかみ難いのだろう。しかし、保守を請け負う会社にとってはずっと現状のままが好ましいわけで、A社の担当者はこうした事実を隠しながら、PL/Iを利用し続ける企業名のみを資料に掲載して、客先に「心配することはない」と言っているようであった。もし筆者が顧客企業なら、A社の担当者を交代させるし、クレームをつけてもいいと思う。

 これ以外にも筆者は、クラウドの利用やアジャイル開発のための研修などが必要と提案したが、A社はいずれも「いらない」と反論し、BYODに至っては「検討するだけムダ」とバッサリと切り捨ててきた。地方企業では長年にわたるメーカーやSIerとの関係から、専門家の提案に対するこうした介入が珍しくない。しかし、これではたまったものではない。

 これらのツケは顧客企業側に「業績の悪化」をもたらす恐れがあり、最悪の場合は「倒産」という形で企業と従業員が責任を負わされることになる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ