XP継続は是か非か? 対立するコンサルとSIerのどっちを信用する?萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(3/3 ページ)

» 2014年11月14日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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金が全て?

 A社の対応があまりにもひどいと感じて、筆者は顧客(コンサル先の製造業)を交えて一度面談した。すると、話の途中でA社のシステムエンジニアが「時間がない」といきなり中座し、さらに営業マンは「御社(客先の製造業)がもう少し経費を増額されるのであれば、我々はどんな相談にも乗ります」と言い出した。

 この面談を実施することは何週間も前から連絡していた。それにもかかわらず中座したシステムエンジニアの思考が分からない。「もっと金を出せ」という営業マンも同じだ。企業の業績回復がニュースになるものの、中小企業は一部を除いてまだまだ回復していないところが多く、IT業界のようにシステム投資ができるような業界はまだ少ない。

 A社は費用対効果の観点からも顧客視点に立った対応が全くできていないのだ。しかも「お金さえ出せば何でも……」という。心の本音ではそうなのかもしれないが、客が聞いたら一瞬で興ざめするだろう。

 ところが、顧客側の経営者は「A社とは30年の付き合いだ。末端の人間(システムエンジニアや営業マンのこと)は教育がまだ浸透していないのだろう。でも、最後はきちんと面倒を見てくれるはずだ」といい、A社の資料に何も疑問を持っていなかった。

 盲目的になった経営者は、内部の側近から説得しないと、何も聞かない。外部のコンサルタントがどう伝えようとしても、なかなか気持ちが伝わらず、もどかしさを感じる。そのままズルズルと関係していくと巨額の浪費につながるはずだ。そして、そのことに気が付いたとしても、「まあ、そのくらいはいいか」と放置してしまう。

 最先端のシステムを構築するにしても、まずは小さな投資から始め、徐々に大きな効果を生むように投資を本格化していくことが鉄則である。A社のような関係ではこのフロー自体が分断されかねない。コンサルタントは、何としてでも顧客企業を説得させないといけないのだが、それがまた辛い作業となる。契約に無い作業だとかいう以前に、極めて大きな負荷になるからだ。

 読者の企業でもこういう状況になっていないか、ぜひチェックしていただきたい。もしそうなっていれば、何とか経営体力があるうちに「猫(経営者)の首に鈴を付ける」ことを真剣に考えてほしい。今ならまだ何とかなると思えるうちが勝負だ。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。

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