プログラミングコンテストの多くはWeb上で行われる。参加者同士で面識があるケースは少ないが、Twitterではつながっている。そのため、現実世界でも本名ではなく、ハンドルネームやTwitterのアカウント名で呼び合うことが多い。
もちろん、中には面識のある友人を誘い、グループで本戦まで勝ち上がってきた参加者もいる。本戦後に談笑していた4人組の男子学生に話を聞いてみた。
彼らは東京工業大学でアマチュア無線好きが集うサークルのメンバー。彼らが今回コンテストに参加したのは、1人が「寿司とピザがタダで食えるイベントがあるってよ」と誘ったのがきっかけだという。
彼らの知識や興味のバックグラウンドはバラエティに富んでいる。中学からゲームの開発を行っていたという人もいれば、大学に入ってから授業でプログラミングをはじめた人などさまざまだ。予選の1週間前に競技プログラミングを始めて、いきなり本戦出場を決めた強者もいた。
サークル内でもボードゲームのAIを実装して対戦させたりと、楽しく、好きなことをしている印象を受けた。コンテストに参加した目的も、競争というよりは単に楽しそうなイベントがあるから来たという感じだ。
将来のビジョンについても皆「特に考えていない」という。単純に“楽しさ”を求めて競技プログラミングをしているが、彼らが扱うプログラミング言語は「C++」「Python」から、スクリプト言語の「HSP」などと多彩。「有名どころは全部触ったことがある」というから驚きだ。友達との交流が、そのままスキルアップにつながっているように感じる。
学生プログラマーの世界は男性がほとんどだが、本コンテストは本戦参加者200人のうち、女性プログラマーが4人いた。
その1人が玲香(ハンドルネーム)さん。彼女はどのようにしてプログラミングの世界に飛び込んだのだろうか。
都内の大学で情報系を専攻している彼女は、小学生のころに初めてPCを触り「フリーソフト」を使ったのがプログラミングに興味を持ったきっかけという。「タダで使わせてくれるような便利なソフトを作る人がすごいと思いました。自分もPCを便利に使えるようなソフトを作りたいと思ったのが、きっかけです」(玲香さん)
そして、中学生のときにはフリーソフトを初めて作り、大学生になって競技プログラミングに出会った。現在は専攻の関係でまわりにプログラマーは多いそうだが、高校ではまったくいなかったため、プログラミングをする機会も自然と減ってしまったという。
「まわりにプログラミングをやっている人がいれば、もっとやっただろうな……」(玲香さん)
環境がプログラミングへのモチベーションを左右すると玲香さんは話す。友達をプログラミングに誘ってみたこともあったが、なかなかうまくいかなかったそうだ。
そんな玲香さんは、来年は大手インターネット関連会社に就職し、アプリの開発に従事する予定だ。競技プログラミングの世界からアプリ開発の道に進む人は少なく、Webサービス系の企業や機械学習の研究者などになるケースが多いという。アルゴリズムを極めることが、直接業務のスキルアップにつながるとは限らないためだ。それでも、競技プログラミングがアプリ開発に応用できる点はあるという。
「最近のアプリ開発は、ただアプリを作れるだけじゃダメだと思うんです。レコメンド機能などはアルゴリズムで動きますし、扱うデータ量が多くなれば、それを効率的にさばけるアルゴリズムも必要になってくると思います」(玲香さん)
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