ニッカのアサヒ、年間5億円のコスト削減――トップダウンで在庫最適化に挑んだ理由とは?爆速導入の“裏ワザ”を情シスが解説(2/3 ページ)

» 2014年12月02日 07時30分 公開
[池田憲弘,ITmedia]

“爆速”導入を実現した「Fittingアプローチ」

photo インテック SI事業本部 事業推進部課長 鎌仲昌彰さん

 同社がMCFrameの導入に着手したのは2012年のこと。2015年までの4年間で5社に導入しなければならず、通常の導入手段では間違いなく間に合わない状況だった。そこで、システム導入を担当したインテックが提示したのが「Fittingアプローチ」という手法だ。

 通常、システムを構築する際は、相手の業務やニーズを調査して、SIerとクライアントがやりとりする要件定義を最初に行う。しかし、この方法では移行までに1社あたり1年半から2年程度かかる。いざ導入する段階になって、足りない機能などが発覚するかもしれない。修正や作り直しで開発期間がさらに延びることもしばしばある。

 「Fittingアプローチ」では、まずインテックがテスト環境を用意し、クライアントにMCFrameを3〜4カ月程度試してもらう。リリース直前に行う運用テストを最初に行うイメージだ。

 そして、MCFrameの標準機能に合わせて業務を再構築するところがFittingアプローチのポイントである。目的が不明な業務や重複している業務をやめ、業務の移管や集約を進めた。実際に帳票関係の業務については、既存の4分の1程度まで業務が減ったという。データ抽出や分析といった、MCFrameを入れても効果が薄い部分については別ソフトで対応した。

 こうしたフィードバックを得た上でシステムの構築に入る。これは業務に合わせてシステムを開発するのではなく、既存のパッケージに合わせて業務を変えるという逆のアプローチだ。これにより、要件定義の時間を減らすだけではなく、ユーザーへの教育期間や運用テスト、移行作業がスムーズに行えるという。「MCFrameの機能が充実しているからこそ、こうしたアプローチも可能となります。通常よりも開発期間を約5カ月短縮できます」(インテック 鎌仲昌彰さん)

photo Fittingアプローチは通常の開発手順(図中のFit&Gapアプローチ)と異なり、まずパッケージ標準機能のままでテスト環境を組み、クライアントに試してもらう
photo アサヒビジネスソリューションズ ソリューション本部 西勝肇さん

 また、このFittingアプローチは複数社で同時に導入を進める際に有効な手法でもある。「通常はSIerがずっと案件に関わるため、2社以上同時に作業を進めるのが難しいのですが、Fittingアプローチではクライアント側がMCFrameを試している間に別企業のシステム開発を進めるといったことも可能です。実際に2社同時に導入を進めた時期もありました」(アサヒビジネスソリューションズ 西勝肇さん)

 実物がない状態で上流工程を詰めても、後から業務と合わない部分が出てきてしまう。このFittingアプローチは、業務に合わない機能を減らす効果もある。開発を進める中で、グループ全体のメリットになると判断した機能については、標準テンプレートとして実装していく。こうしてグループ内でのシステム標準化が実現したのだ。

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