拝啓、Oracle様「Oracleは顧客の信頼を失っている」Computer Weekly

以前からOracleのライセンス戦略に批判的なNPOが、Oracle宛の公開書簡を発表。Oracleに対し、7つの要望を掲げた。アナリストも、Oracleとの契約見直しを勧める。

» 2015年02月18日 10時00分 公開
[Cliff Saran,ITmedia]
Computer Weekly

 ソフトウェアライセンス料金体系の明確化を目指すNPO、Campaign for Clear Licensing(CCL)は2015年1月、米Oracleのラリー・エリソン会長宛ての公開書簡の中で、 ライセンス体系に対する同社の野心的なスタンスを改めない限り、同社の将来の収益は危ういと指摘した。

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 書簡では、ソフトウェアライセンスの売り上げで成功を収めていると自己評価するOracleのアプローチを批判している。

 「(Oracleは)監査の売り上げではなく、顧客満足度、顧客との関係強化、戦略的な価値創出などを重要業績指標(KPI)とするべきだ」と、CCLは公開書簡で主張している。CCLはまた、Oracle製品を使用している組織がOracleの使用許諾ライセンスを受けることによって、(勝手に)監査された上にライセンス料金を請求されるというリスクを負うことに気づいたならば、ライセンスの収益が脅かされるだろうと警告している。

 さらにCCLは、公開書簡で次のように主張する。「企業のガバナンス活動のレベルが上がるにつれて、管理作業に必要以上の負担を感じてOracle製品を敬遠する会社が増えている。Oracleは製品やライセンスプログラムに手を加えて、無用なリスクを減らす必要がある。開発者のためではなく市場の現状に重点を置いて、変革を進めなければならない」

顧客の信頼回復を迫られるOracle

 CCLによると、Oracleはもはや顧客に信用されておらず損をしているという。「Oracleは信用を失って、顧客から重要な案件の相談を持ち掛けられなくなった。同社は顧客との対話に力を入れて、透明性の高い施策を継続することで信用を取り戻す必要がある」と公開書簡は記している。

 CCLは公開書簡で、Oracleが向き合わなければならない7つの主要分野(「要望リスト」参照)として、顧客満足度、監査の透明性、顧客との率直な対話などを指摘した。

 本誌Computer Weeklyの既報通り、Oracleのセールス戦術は顧客には野心的と受け取られることがある。

 さらにComputer Weeklyは、最近ある企業に取材をした。その企業は、ある拠点で使用していた製品のライセンス料金のことでOracleと折り合いがつかなくなり、他社製品に切り替えたという。

 Oracleは、仮想化のライセンス料金に関して以前から批判されてきた。Oracle(製品)は、他社の仮想化ソフトウェア製品を認識しない。つまり顧客には、Oracle製品の使用にはOracleを稼働させる物理サーバに全てOracleのライセンスが必要だというビジネスリスクがある。

 また別のある企業は、Oracleソフトウェアだけが稼働するように全社の物理サーバを構成したところOracleから巨額の請求書が届いた。そこで全サーバへの課金を避けるために、VMwareなどの非Oracle製品のハイパーバイザー上でOracle製品を運用しているという。

 「2015年、Oracleには顧客の声に耳を傾ける何らかの施策に取り組むことを期待したい」と、CCLの創立者マーティン・トンプソン氏は話す。

 トンプソン氏は続けて、Computer Weeklyに対して次のように語った。「われわれは半年間調査や取材を続けるうちに、Oracleと顧客の関係は良好とはいえず、顧客はOracleに対して深い不信感を抱いていると気づいた」

 Oracleの顧客100社を対象に実施したCCLの調査結果は、2014年11月に公開された。その中で「Oracleからの情報提供は明確で率直なものか」という設問に対しては、「そう思わない」と「全く違う」という回答が92%を占めた。

野心的な売上目標設定が批判の的

 米調査会社Forresterの主席アナリスト、ダンカン・ジョーンズ氏は、システム監査に関する問題の根本原因は、Oracleが自社の営業担当者に課している売上目標額と、Oracle製品に対する実際の市場のニーズとの間にギャップがあることだと分析する。

 「Oracleは自社の営業部門に対して、このギャップと過度のプレッシャーを押し付けている。ギャップを少しでも埋めようとして、極端な営業活動に走り、製品の利用を望まない顧客からも無理に収益をしぼり取る営業担当者が現れる事態になっている」と同氏は語る。

 ジョーンズ氏によると、Oracle製品の使用を縮小することを検討している企業は多いという。「このような見直しを事前に行うと、例え最終的にOracle製品の契約を更新することになったとしても、より有利な立場でOracleとの交渉を進めることができる」と同氏は付け加える。

 ジョーンズ氏は、(企業で)ソフトウェア資産管理を担当するマネジャーたちから、Oracleとの付き合いは難しいという不満の声を聞くことが少なくないと話す。「最近は、CIOやその上司に当たる経営幹部など、各企業で実質的な決定権が与えられている人々が、社内テクノロジー戦略上のOracleの位置付けを見直しているという話をよく聞くようになった」

 新規プロジェクトは非Oracleプラットフォームに移行する方が、既存(Oracle)ソフトウェアを移行させるよりも容易なのは明らかだ。「新たな直接投資は他社に切り替える、と脅してみるぐらいの方が、Oracleの営業担当者から顧客側に有利な条件を提示してもらえる」と同氏は提案する。

 ジョーンズ氏に言わせると、Oracleが抱える問題の1つは、ライセンスの売り上げが見込める顧客として、クラウドの導入に消極的な企業を当てにしていることだ。その結果、クラウドのメリットを最大限に活用することを目指す組織からみると、Oracle製品の総所有コスト(TCO)は、(クラウドを導入する場合に比べて)非常に高価となる。

 「仮にOracleが基本方針を変更してクラウド市場での競争力を向上させるとすると、それは同社の収入源を自ら断つようなものだ。なぜなら負荷の高いOracleワークロードを処理する際に、顧客はクラウドの効率性と利便性を利用できるからだ。しかもコア(CPU)のキャパシティーの総計を増大させる必要もない」と同氏は締めくくった。

Oracleに実現してほしい要望リスト

1.戦略への集中

システム監査の売り上げではなく、顧客満足度、顧客との関係強化、戦略的な価値創造などを重要業績指標(KPI)とするべきだ。

2.監査の明確性

Oracleは監査事業において高い透明性を確保し、CCLが提唱する行動規範に準拠するべきだ。

3.どうか、社内の意思統一を

企業は同社に対して、製品のライセンス体系に関する明確な統一見解を説明してほしいと望んでいる。社内の協議や情報交換もなしに、顧客を部署間でたらい回しにするのは勘弁してほしい。

4.ナレッジベース

同社は完成度の高いナレッジベースに投資して、顧客に対してこの分野の啓発活動を行ってもらいたい。

5.リスクのリエンジニアリング

企業のガバナンス活動のレベルが上がるにつれて、管理作業に必要以上の負担を感じてOracle製品を敬遠する会社が増えている。Oracleは製品やライセンスプログラムに手を加えて、無用なリスクを減らす必要がある。開発者のためではなく市場の現状に重点を置いて、変革を進めなければならない。

6.ソフトウェア資産管理の普及活動

Oracleは顧客を指導して、ソフトウェアの管理に適切なリソースを配備する必要があることの理解を促し、顧客に積極的に働きかけてOracleソフトウェアに関するイセンス管理の研修と管理作業の実践を支援してほしい。

7.顧客に対する働きかけ

Oracleは信用を失って、顧客から重要な案件の相談を持ち掛けられなくなっている。同社は顧客との対話に力を入れて、透明性の高い施策を継続することで信用を取り戻す必要がある。

出典:Campaign for Clear Licensing


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