IEが消える? IT管理者を悩ますWindows 10の「Spartan」ブラウザEnterprise IT Kaleidoscope(1/3 ページ)

業務アプリケーションに関する問題の1つがWebブラウザへの対応だ。Internet Explorerだけでも旧バージョンをいつまでサポートすべきか悩ましいが、Windows 10に搭載されるSpartanは、IT管理者に新たな対応を要求することになるかもしれない。

» 2015年03月23日 08時00分 公開
[山本雅史ITmedia]

 2015年中にリリースされるWindows 10の大きな変化の1つが、Webブラウザだろう。Microsoftは、今までのInternet Explorer(IE)から新しい「Spartan」(開発コード名)に移行していく。今回はSpartanブラウザと企業での対応について考察したい。なお、Windows 10のTechnical PreviewにはSpartanが搭載されていないので、本稿では1月末に行われたWindows 10のイベント後に出てきた情報を基に解説していく。

ネットの最新トレンドを取り込むために

 Windows 10ではIEとSpartanの2つのブラウザが搭載されることになった。Spartanは、Google ChromeやFirefoxなどと同じく、HTML5などインターネットのスタンダードを幅広く取り入れたWebブラウザとなる。

 従来のIEの問題点は、古いバージョンのIEが持つMicrosoftの独自規格をサポートすることによる、新しい規格への対応の遅れだ。古いIEではHTML規格をMicrosoftが独自解釈していたため、画面表示がChromeやFirefoxなどと異なっていた。古いIEは非常に多くのユーザーや企業で使われており、IE専用にカスタマイズされたWebサイトや社内サイトが存在するため、簡単に修正すれば済むという問題ではない。

 Microsoftは、これまでIEをバージョンアップする毎に、いろいろな部分を修正したり、非常に古いIEとの互換性を廃止して新しいインターネット規格への対応を進めたりしてきた。しかしこの先10年をみれば、古いIEとの互換性を重視したままIEを進化させていくことが非常に難しくなった。

 そこで同社は、全く新しいブラウザを開発した。SpartanはIEとの互換性を考えず、ChromeやFirefoxのように、モダンなインターネット規格をサポートするために誕生したといえよう。プログラム自体はUniversal Appとして開発され、PC版のWindows 10、スマートフォン向けのWindows 10 for Phone、Xbox Oneなどでも同じものが利用される。画面サイズが異なっても、全てのデバイスで同じように表示されるようになる。

Spartanブラウザは、PCでも、スマートフォンでも同じ表示ができる

 こうした試みは以前にもあった。例えば、Windows Phone 8/8.1ではPC版とある程度同じ機能を備えるIE 11が搭載されたが、互換性は完全ではなかった。しかし、Windows 10のSpartanはどのデバイスでも同じであり、PCでも、スマートフォンでも、Xbox Oneでも表示や動作の互換性が保証される。Webサイト開発者は、今までのように複数のデバイス向けにWebサイトをコーディングしなくて済む。

 Spartanには、IE 11で採用されたレンダリングエンジンのMSHTML(Trident)ではなく、EdgeHTMLというMicrosoftが新たに開発したレンダリングエンジンが利用される。当初はWebKitを利用する案もあったようだが、GoogleがWebkitから分岐したBlink(WebKitのコードをクリーンナップして、再開発した)を採用することになり、MicrosoftはMSHTMLから利用できるコードを使ってEdgeHTMLを開発した。

Spartanの構造

 ただ、EdgeHTMLという独自のレンダリングエンジンであっても、独自規格をサポートするのではなく、モダンなインターネット規格を積極的にサポートしていく。本稿執筆時点でまだSpartanのTechnical Previewが公開されておらず詳しいことは不明だが、SpartanではIEとは異なり、ChromeやFirefoxと同じような動作、表示ができるようになるだろう。

 またJavaScriptエンジンに関しては、IE 11で搭載されているCharkeが引き続き採用されているが、Spartanではさらに、JavaScriptのパフォーマンスをアップするためにasm.js(現在はFirefoxのみでサポート)を採用することになった。

Sparatanではユーザーが手書きでメモができるようになっている
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