暗号化通信を盗聴可能にする攻撃、日本のネットバンクを標的に

犯罪者が暗号化通信の内容を盗聴できるようにPCの設定を変更してしまうマルウェアが見つかった。3月までに約400件の検出報告があったという。

» 2015年04月13日 16時52分 公開
[ITmedia]

 インターネットバンキングの利用者を狙う新たなマルウェア「WERDLOD」が見つかったトレンドマイクロが報告した。暗号化通信の中身を盗聴できるようにPCの設定を変えてしまうという。1〜3月に国内だけで400件近い検出があったという。

攻撃方法(トレンドマイクロより)

 同社によるとWERDLODは、日本語で書かれた通販会社の偽の請求書を通じて感染する。メールには「ご注文No.」や「画像をダブルクリックして領収書をお受け取りください」と記載され、「Invoice」と書かれている場合もある。添付されているRTFファイルを開くと感染してしまう。

マルウェアに感染させる不正なメール(同)

 感染後にWERDLODは、PCのレジストリを書き換え、ユーザーが26のJPドメインへアクセスする際に、攻撃者が設置したとみられるプロキシサーバを経由するように設定を変更する。26のJPドメインは、攻撃者が指定した可能性のある4つの大手金融機関と10の地方銀行などのネットバンキングサイトが含まれていた。

 さらにWERDLODは、細工したルート証明書を感染PCにインストールする。インストール時に警告が表示されるが、WERDLODが勝手に警告メッセージの「はい」ボタンを押してしまうため、ユーザーが気付く間もなく、勝手に証明書が追加されてしまう。

細工された証明書も勝手にインストールされ、ユーザーが止めようがない(同)

 こうした設定変更により、攻撃者はユーザーとネットバンキング間の暗号化通信に割り込んで通信内容を盗み取れるようになる。WERDLOD自体は設定を変更するだけで、通信内容を盗聴することはないという。

 ネットバンキング側でEV SSL証明書を採用している場合、通常はユーザーのWebブラウザのアドレスバーが緑色に変化する。WERDLODを使った攻撃の場合はアドレスバーの色が変化せず、ユーザーが攻撃に気が付く可能性があるという。同社では銀行側の対策として多段階認証やクライアント証明書を利用したSSLクライアント認証、EV SSL証明書の導入などを挙げている。

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