NTT ComとBoxが協業、通信経路のセキュリティ強化へ

クラウドストレージでのファイルの保管や共有におけるセキュリティ対策を大幅に向上させる。

» 2015年06月16日 15時54分 公開
[國谷武史ITmedia]

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)と米Boxは6月16日、企業や組織の拠点からBoxサービスにインターネットVPNで接続する「Box over VPN」を共同開発すると発表した。通信経路を含むクラウドストレージでのファイルの保管や共有におけるセキュリティ強化が目標で、2015年内のサービス開始を予定する。

 新サービスは、NTT ComのVPN接続サービス「Arcstar Universal One」を経由して、オフィスなどからBoxのクラウドサービスへ安全に接続できるもの。通信経路におけるセキュリティレベルを高めることで、転送データを狙う盗聴や改ざんなどのリスクを低減させ、クラウドを利用した企業や組織での情報活用の促進を支援する。

サービスイメージ

 サービスメニューは1IDあたり月額2400円からの「Business」と、同4980円からの「Enterprise」を予定する。いずれもストレージ容量は無制限で、ファイルあたりの容量は5Gバイトまで。Businessでは社外ユーザーのライセンスが有償、ほかのSaaSとの連携は1サービスまでとなるが、Enterpriseでは無償および無制限となり、アクセスログなどのレポートも提供される。

 同日会見したNTT Comの庄司哲也副社長は、「キャリアのVPNでBoxに接続するサービスはアジアでは初めて(米国ではAT&Tが提供済み)。Arcstar Universal Oneは196カ国で提供しており、企業や組織が国内外で安全に情報を共有できるようになる」と説明。Boxのアーロン・レヴィ共同創業者兼CEOは、「NTT Comと1年半の時間をかけて新しい技術を利用したサービスのあり方を検討し、セキュリティを組み込んだクラウドサービスを日本のユーザーに提供する」と述べた。

 NTT Com アプリケーション&コンテンツサービス部の菅原英宗部長によれば、新サービスの特徴は(1)VPNによる通信経路の保護、(2)NTT Comによる24時間サポートの提供、(3)オンプレミスのシステムや外部サービスとの連携・統合の実現――の3つ。同社では2008年からセールスフォース・ドットコムとも同様のサービスを提供しており、「この経験を生かしたサービスの拡大を図る」(菅原氏)という。

 当初のサービスはVPN接続がメインとなるが、レヴィ氏は「日本にもBoxのストレージレポジトリを置く準備を進めている」と話し、業界規制などで国外にデータを置けないような企業にも対応する可能性を示唆した。庄司氏は、NTT Comが提供するマネージドセキュリティサービスとの連携などにも言及。VPN接続だけでなく、不正サクセスなどサイバー攻撃への監視や対応といった包括的なセキュリティサービスとして展開する可能性を検討しているとした。

国内の主なBoxユーザー

 企業や組織では社員、職員などが組織の許可を得ずにクラウドサービスなどを勝手に利用してしまう「シャドーIT」が問題化し、官公庁での安易な利用から重要な情報へ誰もがアクセスできてしまう状態になっていた事件も起きた。

 ボックスジャパンの古市克典社長は、「こうした問題は個人向けサービスの利用とアクセス制御やデータの管理が適切に行われていないことで起きる。当社のサービスは米国連邦政府機関も多数利用し、きめ細かいセキュリティ対策を講じられる」と説明し、官公庁や金融などセキュリティ要件の厳しい業界のユーザーも取り込みたいと述べている。

協業を発表したBoxの古市氏とレヴィ氏、NTTコミュニケーションズの庄司氏と菅原氏(左から)

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