製薬大手AstraZenecaのクラウドストレージ全社導入は大きな転換点?

バイオやメディカルなど機密性の高い情報を扱う企業でも、クラウドサービスを使った情報共有や業務効率化に取り組む動きが加速するのだろうか。

» 2015年02月17日 08時00分 公開
[ITmedia]

 100カ国以上で事業を展開する製薬大手のAstraZenecaが1月、約5万1000人の全従業員向けにクラウドストレージサービスのBOXを導入することが発表された。同社の採用は、情報の活用とセキュリティの確保という点において注目すべき出来事になりそうだ。

 BOXの導入についてAstraZenecaのCIO、デイビッド・スモリー氏は「テクノロジーは当社のイノベーションを推進する重要な要素であり、その中でもコラボレーションとモビリティは、当社の戦略における最重要課題の1つ。Boxはこの領域における業界標準となっており、当社は全社員のための効率性、セキュリティ、簡素化を促進し続けるためにBoxを選択した」とのコメントを寄せている。

厳しい情報セキュリティが求められる製薬分野でのクラウドストレージサービスの本格導入は先進的といえる

 AstraZenecaは、循環器や代謝、呼吸器、炎症、自己免疫、オンコロジー、感染症、ニューロサイエンスのリ領域で創薬や開発、製造、マーケティング、営業活動を行っている。バイオ/メディカルでは極めて機密性の高い情報が膨大に扱われることから、金融などの分野と同様に高いレベルのセキュリティを確保することが必須とされる分野といえる。

 多くのクラウドストレージサービスは、当初はコンシューマ向けを中心に提供されていたことから、企業が必要とするセキュリティ機能が不十分であったり、サービス自体の信頼性に不安を抱かれたりする傾向にあった。

 しかし、BOXなど法人向けをうたうサービスでは企業ユーザーなどの要件を満たす機能や品質を確保することで、企業ユーザーを確保しつつある。ただ、ユーザー側ではクラウドストレージサービスの利用を一部の業務や社員に限定するケースがまだ多いようだ。

 そうした現状の中でAstraZenecaは、社内外における安全な情報共有とモバイルからアクセスできることを目的にBOXを採用したといい、クラウドストレージサービスに対するセキュリティ上の懸念を払しょくできたとみられる。

BOXの企業ユーザーは27万5000社に達したという

 AstraZenecaへのサービス提供についてBoxは、「ライフサイエンス業界に注力しており、AstraZenecaによるBoxの採用はこうした取り組みにより実現した。Boxは、エンドユーザーのための直感的な使いやすさと、大規模な情報を安全に管理できる堅牢な管理者権限を併せ持ち、特定業界の顧客が安心してコラボレーションとモビリティを導入できるように支援している」(EMEA地域担当シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのデイビッド・クアントレル氏)と述べている。AstraZenecaは、BOXの「顧客アドバイザリーボード」にも参画するという。

 2014年5月には米General Electric(GE)が、170カ国以上の30万人の従業員向けにBOXを導入することが発表された。GEは電機や産業向けシステム、ヘルスケア、金融など様々な事業領域を持つ世界最大級のコングロマリットとして知られるだけに多くの情報を取り扱っているが、その基盤としてクラウドストレージサービスが選ばれた形となる。

 日本では情報の管理や共有については、社内環境(オンプレミス)をベースに行うことが望ましいという風潮が強い。情報管理に関する業界のガイドラインなど他国とは環境が違う部分もあるが、海外企業で相次ぐ大規模なクラウドストレージサービスの採用は、今後の日本企業での情報共有や活用のあり方にも影響を与えそうだ。

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