DeNAが相次いでクラウドサービスを導入、その狙いとは?

人事や会計、経費精算などのシステムを次々とクラウドに移行しているDeNA。その背景には何があるのか。IT戦略部の村上淳部長に聞いた。

» 2014年08月06日 07時45分 公開
[伏見学,ITmedia]

 2006年7月に中国・北京に子会社を設立して以降、現在(2013年3月時点)までに10カ国に拠点を構えるなど、海外展開を積極的に進めているディー・エヌ・エー(DeNA)。この経営戦略に基づき、IT部門の役割もここ数年で大きく変化している。

DeNA 経営企画本部 IT戦略部の村上淳部長 DeNA 経営企画本部 IT戦略部の村上淳部長

 以前は情報システム部という名称で社員のPCやモバイル端末の運用管理を主に行ってきていたが、今後DeNAがグローバルを主戦場にビジネスするには、IT部門も発想を変え、全体最適で業務プロセスを見直すべきだという考えから、2011年10月にIT戦略部として新たなスタートを切った。

 「グローバルレベルでのビジネス展開やモバイルゲームの再強化、コンテンツプラットフォームの新規事業立ち上げなどを可能にする環境を実現することが経営から強く求められていた」とDeNA 経営企画本部 IT戦略部の村上淳部長は振り返る。

 IT戦略部のミッションは、DeNAの経営環境を良くしていくこと。20人ほどの組織で、ITにかかわる企画から、戦略、設計、開発、運用まであらゆる部分を担っている。「今や企業において業務とITは切り離せないものになっている。社内の業務環境を改善するのが我々の役目だ」と村上氏は強調する。

鍵は「スピード経営」と「グローバル化」

 そうした中、DeNAはビジネスや業務を支えるITシステム基盤として、クラウドサービスの活用に積極的な姿勢を見せている。例えば、人事および会計システムに米NetSuiteのクラウドERP(統合業務パッケージ)「NetSuite」、海外子会社やパートナー企業との情報共有に向けて米Boxのオンラインファイルストレージ「Box」、承認のワークフローなどにサイボウズのクラウドサービス「kintone」、経費精算システムに米Concurのクラウド経費管理「Concur Expense」、といった具合だ。

 「クラウドは1つの手段であり、クラウドだからという理由で選んでいるわけではない」と村上氏は前置きしつつ、同社の特徴である「スピード経営」を実現する上でクラウドは有効だとする。

 また、「グローバル化」もクラウド活用の大きな要因になっている。例えば、経費精算システムに関して、以前は国内向けのオンプレミスシステムを使っていたが、使い勝手が悪かったことに加えて、各国の拠点でバラバラなシステムを導入していたため、経理業務が非効率だった。「経費精算業務はどの国でもさほど変わりはない。多言語、多通貨に対応した1つのシステムをすべての社員が使うことが好ましかったため、それを実現するクラウドサービスに切り替えた」と村上氏は述べる。Concurを導入したことで、今まで5人の経理担当者でオペレーションしていたのを2人で対応できるようになった。

 現在、DeNAでは、自社開発のオンプレミスシステムとのハイブリッド環境だが、社内プロセスにかかわるシステム基盤については5割以上がクラウドだという。

海外拠点でもすぐに業務を再開

 一方で、クラウドの導入を検討する際、セキュリティに懸念を示す企業は多い。当初DeNAでも外部事業者のデータセンターなどにデータを置いてはいけないというルールがあったため、クラウド導入に難色を示していた。しかし、そのままではビジネススピードを阻害するという判断から、セキュリティポリシーを見直し、例えば、顧客情報など自社でしっかり管理すべきデータはオンプレミスで、ある一定の基準を満たしていればセキュリティが担保できるデータはクラウドでと、柔軟な管理ができるようにした。

 さまざまなシステムをクラウド化したことによる効果は何か。以前は事業部ごとにツールなどを個別導入していたため、社員は異動のたびに一から使い方などを覚える必要があった。クラウドによってプラットフォームを共通化したことで、基本的にどの社員も同じツールを使えるようになった。例えば、出張で海外拠点に行ってもすぐに日本のオフィス環境と同じように仕事ができるなど、ビジネスを途切れさせることがなくなったという。

 「クラウドはすべての企業にとって役に立つものというわけではない。しかしながら、24時間365日、グローバルでビジネスを手掛ける企業にとっては相性がいい。また、日常的にモバイルを業務利用するDeNAのような企業にとっては、クラウド活用のメリットは大きいと言えるだろう」(村上氏)

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