欧米では「インダストリアル・インターネット」や「インダストリー4.0」に代表される産業システム向けのIoT基盤が注目を集めている。これを主導するGEの動きやIoTクラウドにおける課題をみていこう。
本連載の第5回記事で、エネルギー、健康医療、交通・運輸など、重要な社会インフラを支えるビッグデータ分析にオープンイノベーションを活用する、米General Electric(GE)の事例を取り上げた。GEのビッグデータ戦略上、最重要領域となっているのが「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)」だ。
GEは2012年11月、「インダストリアル・インターネット」の概念を発表し、様々な産業機器に組み込まれたセンサー端末から生成されるビッグデータ利活用に着目してきた。インダストリアル・インターネットを実現するためのプロセスとしてシステムへの投資に加え、技術イノベーションの持続的な努力、堅牢なサイバーセキュリティシステムアプローチ、新しい部門横断的な役割を担う人材開発を行っている。
具体的な取組としてGEは2013年6月、ジェットエンジン、医療機器、発電用タービン、機関車など、産業システムの設備/機器別予測アプリケーションソフトウェア「GE Predictivity」と、産業用機器から生成されるビッグデータをリアルタイムで処理するHadoopベースのデータ管理ソフトウェア「Proficy Historian HD」を発表すると共に、インダストリアル・インターネット向けクラウドプラットフォームの開発に向けたAmazon、Accenture、Pivotalとの戦略的アライアンスを発表した(関連リリース)。
ヘルスケアの分野では2014年1月、医療機関向けワークフォース管理ソフトウェアベンダーであるAPI Healthcare(本社:米国ウィスコンシン州)の買収で合意したことを発表した(関連リリース)。また、サイバーセキュリティの分野では2014年5月、エネルギー、電力、医薬品、水道、産業機械など、重要情報インフラ(CII:Critical Information Infrastructure)や電子制御分野に特化したセキュリティベンダーであるWurldtech(本社:カナダ・バンクーバー)の買収で合意したことを発表した(関連リリース)。
さらに2014年10月、産業システムのアセットパフォーマンス管理(APM:Asset Performance Management)実現に向けたインダストリアル・インターネット向けOS「Predix」の開発およびPivotalと共同でストリームデータを収集・蓄積・分析データベース「data lake」を開発したことを発表した(関連リリース)。
そして2015年8月5日には、航空、健康医療、輸送、石油、ガスなど、インダストリアル・インターネットにおけるビッグデータ分析向けのクラウド型プラットフォームサービス(PaaS)として「Predix Cloud」を提供する計画を発表している(関連リリース)。
「Predix Cloud」は、オープンソースのPaaSソフトウェア「Cloud Foundry」を基盤として利用し、アプリケーションの開発フレームワークやライフサイクル管理機能を提供するサービスだ。機器の接続性(アセットコネクティビティ)、産業機器から生成されるビッグデータの拡張性、セキュリティ/コンプライアンス、規制対応/ガバナンス、相互運用性、ゲートとフェンスに囲まれたコミュニティ(ゲーテッドコミュニティ)などを特徴としている。
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