大学で研究していた言語処理を仕事にしたいと思った金山さんは、2000年4月に日本IBMの門をたたく。大学で研究を続けるという選択肢もあったが「学術的な深みに入りこんでしまう前に、実用的な問題を解いてみたい」と判断し、企業に就職する道を選んだ。IBMを知ったのは翻訳ソフト「翻訳の王様」を目にしたことから。縁あって同社で3カ月インターンとして働いた経験も、この選択を後押ししたという。
そして、志望通り同社の研究所に入った金山さんは、自動翻訳や評判分析(文章の中にある何が良い、悪い、欲しいといった人の意見や感情表現を取り出す分析)の研究を行い論文を多数発表していたが、2008年に転機が訪れる。Watsonプロジェクトへの参加だ。
プロジェクトメンバーは米国、日本、中国、イスラエルの4カ国から集まった25人。それぞれが検索や統計的解析、テキストマイニングといった技術の研究員で、金山さんは知識抽出の分野を担当した。
「私はWikipedia内にある文章から、各単語に対してカテゴリを自動的にタグ付けする作業などを行っていました。人が解釈できる知識をもとに統計的な手法で答えを出していく。Watsonがクイズ王に勝ったのは、機械と人の両者がうまく組み合わさった結果だと思っています」(金山さん)
その後も、金山さんはテキストマイニングの研究を続けている。2012年には韓国に飛び、韓国語のテキストマイニングを行った。「多数の言葉の中から価値ある言葉や、新たな知識を発見できる」点が魅力だと語る金山さん。今やビジネスには必須の技術になってきているという。このような技術がビジネスにつながり、クライアントに驚かれたり喜ばれたりするときに“やりがい”を感じるそうだ。
「分析のデモを見せると、意外なところでクライアントの方に驚かれることがあります。最先端のものでなくても役に立てると分かったときはうれしいですね。自分がやっている研究が、普通の人の“当たり前”ではない領域に来ているということですから。逆にクライアントの課題から研究のアイデアを得て、論文として発表することもありました」(金山さん)
最先端の技術もビジネス的なアイデアがあって、初めて人の役に立つ。そういう機会が得られる点が、研究者として企業に勤めることのメリットだと金山さんは感じているという。
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