IT産業構造の変化を映すDellのEMC買収Weekly Memo(1/2 ページ)

DellによるEMCの買収が先週、発表された。この動きはITトレンドから見て何を意味しているのか。新生Dell・EMC連合の注目点はどこか。筆者なりに考察してみたい。

» 2015年10月19日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]

“第3のプラットフォーム”への移行を促進

 「DellとEMCが一緒になれば、お互いの事業における補完関係を生かして、新たなジデタル時代の幕開けに相応しいテクノロジーカンパニーが誕生する」――EMCジャパンの大塚俊彦社長は10月15日、同社が都内ホテルで開いたプライベートイベント「EMC FORUM 2015」の冒頭の挨拶でこう語り、「私たちは引き続き、広範で柔軟なIT活用の選択肢をお客様にお届けしていく」と強調した。

 大塚氏に続いて基調講演を行った米EMCアジアパシフィック/日本地域担当のデビッド・ウェブスター プレジデントも次のように語った。

 「DellとEMCが一緒になることによって、クラウドやモバイル、ビッグデータなどの活用を図る“第3のプラットフォーム”に向けたトータルソリューションをお客様にご提供できるようになる」

 同氏はその根拠として、EMCグループで現在提供している統合ソリューション(下図参照)にDellのサーバソリューションを組み合わせれば、それが実現できることを強調した。

 DellがEMCを買収することで合意したと発表したのは10月12日(米国時間)。以前から持ち上がっていた話だが、約670億ドル(約8兆円)というIT業界で過去最大の買収劇に衝撃が走った。両社の売上高を合計すると800億ドル超に上る見通しで、法人を対象としたIT市場においてIBMやHPと肩を並べる勢力が誕生することになる。(関連記事

図・EMCグループの統合ソリューション

 大塚氏が「補完関係」としているのは、製品ポートフォリオもさることながら、顧客層としてEMCが大企業、Dellが中小企業に強いことが挙げられる。その意味では相乗効果を期待できるが、一方でDellはサーバやPC、EMCはストレージを主力としたハードウェアベンダーとしての色合いが濃く、両社とも第3のプラットフォームに対応したソリューション事業への転換が課題となっていた。

 ただ、Dellはここ数年、ITインフラに関連するソフトウェア事業にも力を入れ、EMCも仮想化ソフト大手のVMwareやセキュリティ大手のRSAセキュリティなどを傘下に持ち、両社とも事業転換の課題に立ち向かいつつあった。今回の買収劇はそんなタイミングでの動きで、事業転換に向けて強い危機感を持つ両社の“立ち位置”と今後の方向性が一致した意思決定だったのではないかと推察する。

wm 「EMC FORUM 2015」に登壇したEMCジャパンの大塚俊彦社長(左)と米EMCアジアパシフィック/日本地域担当のデビッド・ウェブスター プレジデント
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