クラウド進展でソフトベンダーの業績はどうなるかWeekly Memo(1/2 ページ)

SAPがソフトウェアのクラウド化を着々と進めながら好調な業績を持続している。ビジネスモデルの変化による業績への影響が注目される中で、果たして今後はどうなるか。

» 2016年02月08日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]

クラウドはストックビジネスとして業績に寄与するが……

会見に臨むSAPジャパンの福田譲社長

 「SAPのクラウド事業は“峠”を越えて本格的な成長軌道に乗った」――SAPジャパンの福田譲社長は2月3日、同社が開いた事業戦略説明会で、クラウド事業の業績への影響を聞いた筆者の質問にこう答えた。

 「峠を越えた」とは、どういう意味か。これまで展開してきたオンプレミス向けソフトウェア事業とはビジネスモデルが異なるクラウドサービス事業が増加しても、好調な業績を今後も持続することができるめどがついたと受け取れる。

 オンプレミス向けソフトウェアの場合、製品販売時に売り上げを計上できるが、クラウドサービスはサブスクリプションモデルであるため、例えば、月次で売り上げを計上する。したがって、ソフトウェアベンダーにとっては、オンプレミスからクラウドへの移行が進むにつれ、売り上げが減少する。また、売り上げ減少とともにクラウドへの投資もかさむことから利益率も低下する。

 一方、クラウド事業は採算点を超える規模になれば、あとはストックビジネスとして業績に寄与する。そこに到達するまで、オンプレミス事業も推進しながら業績が停滞する期間をどれだけ短くできるかがカギとなる。ソフトウェアベンダーが懸念するのは、オンプレミス事業が落ち込むとともにクラウド事業がなかなか採算点を超えられない――いわゆるマイナスのスパイラル状態に陥ってしまうことだ。

 企業向けソフトウェアベンダーの代表格であるSAPの業績は、そうした意味で非常に注目される。福田氏は会見で、独SAPが1月22日に発表した2015年度(2015年1月〜12月)の業績のポイントも交えて、クラウド事業が本格的な成長軌道に乗った状況を次のように説明した。

 まず、売上高は前年度比10%増の208億ユーロ(約2兆7000億円)、営業利益は同5%増の63億ユーロ。売上高営業利益率は30%を超える。この中でクラウド事業の売上高は同82%増の23億ユーロ、新規受注も同103%増と高い伸びを示した。加えて、金額規模の大きいオンプレミス向けソフトウェア事業も同6%増の149億ユーロとなったことが、好調な業績を下支えした形だ。

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