クラウド進展でソフトベンダーの業績はどうなるかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年02月08日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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SAPの売上高クラウド比率は5年後に3割へ

 図1は2010年度から2015年度までの売上高と営業利益の推移で、いずれも過去最高を更新し続けている。それもさることながら、この図で福田氏が強調したのは、下部の雲の絵にあるクラウド比率だ。この数値は「オンプレミスとクラウドを合わせた年度ごとの新規案件の売り上げに占めるクラウドの比率」だという。

Weekly Memo 図1:SAPの売上高と営業利益の推移(出典:SAPジャパンの資料)

 図1にあるように、2011年度までは0%だったクラウドが2015年度では32%に膨らんでいる。福田氏はこの数値について、「1年前、SAPは2018年度にオンプレミスとクラウドの売上高を逆転させる方針を打ち出した。2015年度で32%になり、計画通りに進む見通しが明確になった」としている。

 ちなみに、図1の最下部にはSAPがこれまで買収した「サクセスファクターズ」「アリバ」「コンカー」などの特定業種・業務に特化したクラウドサービスベンダーの名前が記されている。こうした投資もSAPのクラウド事業の急速な拡大につながっている。

 もう1つ、興味深い図を紹介しておこう。図2はSAPが手掛ける事業別の粗利率の推移を示したものである。

Weekly Memo 図2:SAPが手掛ける事業別の粗利率の推移(同)

 図の左側に記されているのは事業区分で、上から「Software and support」はオンプレミス、「Cloud」はクラウド、「Cloud and software」はそれらを合わせたもの、「Services」はその他サービス事業を指す。福田氏がこの図で強調したのは、オンプレミスとともにクラウドも年度平均の粗利率が上昇していることである。粗利率の上昇は、当然ながら利益率の改善につながる。

 また、SAPジャパンの2015年度の業績については、売上高が前年度比6%増の6億3600万ユーロ(約830億円)、クラウド事業の新規受注が同193%増、オンプレミス向けソフトウェア事業が同5%増といった数値を公開した。

 最後に筆者の注目点を述べておくと、先ほど「オンプレミスとクラウドを合わせた年度ごとの新規案件の売り上げに占めるクラウド比率」という話があったが、対象を新規案件だけでなく売り上げ全体に占めるクラウド比率として計算すると、2014年度は6%、2015年度は11%になる。さらにSAPが公開している中長期の見通しをもとに計算すると、2017年度で最大17%、2020年度で最大29%になる。

 ちなみに、2020年度の見通しは、売上高が260億〜280億ユーロ、営業利益が80億〜90億ユーロ、クラウド事業の売上高が75億〜80億ユーロ。29%のクラウド比率は80億を280億で割った計算だ。

 果たして、売り上げ全体に占めるクラウド比率が30%を超えるようになってきたときに、思惑通りの売上高や営業利益を確保できるかどうか。こうした構図はSAPに限らず、企業向けソフトウェアベンダー全てに当てはまることだろう。SAPは中長期に向けた業績見通しに確固たる手応えを得ているようだが、ビジネスモデルが大きく変わる中で、クラウドサービスの料金体系がどんな形で定着するのかも含めて引き続き注視していきたい。

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