企業においてAIを推進する「CAIO」がなぜ必要なのか。成果を出しているCAIOの共通点とは。PwC Japanグループの4つの調査結果から探る。
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AIが企業に大きなインパクトをもたらすことが分かってきた中で、経営視点でどのように取り組めばよいのか。その対策の一つが「CAIO」(Chief AI Officer:最高AI責任者)の設置だ。その実態について、PwC Japanグループ(以下、PwC)が実施した調査の結果を発表したので、その内容からCAIOの実像や役割について考察したい。
PwCは2025年11月21日、日本企業におけるCAIOの実像や役割について調査した「CAIO実態調査2025」の結果を発表した。その内容について同社が同日開催した記者説明会で藤川琢哉氏(PwC Japanグループ チーフ・AI・オフィサー兼データ&AIリーダー)と塩原翔太氏(PwCコンサルティング マネージャー)が説明に立った。
藤川氏は今回の調査について次のように説明した。
「AIの進化が社会全体に大きなインパクトを与えており、全ての企業にとって必須の経営アジェンダとなっている。その潮流の中で、企業におけるAI活用を戦略的に推進する役割を担うのがCAIOだが、現状ではその実態が不明瞭だ。そうした状況を打開し、これからのCAIOの在り方を明らかにし、当社としても的確なサービスを提供できるようにしていきたいと考えた」
同氏によると、PwCとしてはCAIOについて、「AI戦略の立案から実行までを統治し、責任あるAIによる変革を主導する経営幹部」および「社内外ステークホルダーとの連携を通じて、事業価値創出とリスク管理の両立を担う」と定義している。
なお、同調査は、売上高500億円以上の日本企業でAI導入に関与する課長以上を対象として2025年6月にWebで実施し、1024人から回答を得た。
本稿では、4つの調査結果を紹介する。
図1は、CAIOの設置状況およびAI活用推進度を領域別に示したグラフだ。
CAIOの設置状況を示した左のグラフでは、CAIOを正式に設置している企業は22%、CAIOと同等の人材を設置する企業まで含めれば60%に達していることが分かった。これは同社でも「予想より多い印象」(塩原氏)とのことだ。また、右のグラフではCAIOの設置の有無で成果の出方に大きな差があり、CAIO設置企業では業務・技術・管理の全領域でAI活用推進度が20ポイント以上高い結果となっている。
図2は、成果を挙げているCAIOの特徴を専門性と登用方法から見たグラフだ。
この結果を見ると、CAIOの専門性や登用方法によって成果創出の領域に特徴がある。横軸に記されている「コスト削減」「新規収益源創出」「顧客体験向上」「AIガバナンス」「AIによる意思決定支援高度化」において顕著な差が生じている。こうした結果から、塩原氏は「どの領域における成果を重要視するか目標を定め、成果に適した特性のCAIOを登用することが望ましい」との見方を示した。
図3は、CAIOの役割の理想と現実およびCAIO組織の専門人材ポートフォリオのグラフだ。
CAIOの役割の理想と現実を示した左のグラフでは、左側にCAIOの主な役割、右側にその理想と現実のギャップが記されている。これによると、CAIOは従来以上に「AIのリスク管理」「AI人材の採用・育成」「エグゼクティブへのAI教育・啓発」の役割を求めているものの、「下準備に注力できていないことから来るギャップが生じている」(塩原氏)とのことだ。また、右のグラフでは、CAIO組織の専門人材ポートフォリオにおいて、業務知見のあるビジネスアナリストや業務で使うAIをデザインするUX(ユーザーエクスペリエンス)/UI(ユーザーインターフェース)デザイナーのような非技術人材の登用を増やしていることが見て取れる。
図4は、CAIOが他のCxOなどとの社内連携によって成果を創出した割合を示したグラフだ。
縦軸にCEO(最高経営責任者)をはじめ各領域の責任者、横軸に成果の領域を示したグラフだ。コスト削減や新規収益源創出は関係部門との連携によって成果を出しやすい一方、顧客体験向上は連携しなくても成果が創出できている。成果領域ごとに適した社内連携の形が存在することが見て取れる。塩原氏は「基本的にはCAIOと関係部門が連携してAI活用を推進することが望ましいが、目的によってはCAIOに独立した権限を与えた方がよいケースもある」との見方を示した。
以上のように調査結果を説明した塩原氏は、想定されるCAIOのタイプとして次の3つを挙げた。
その上で、塩原氏はこれからCAIOを設置する経営層への提言として、創出したい3つの成果それぞれに適したCAIO像を図5に示した。
コスト削減や業務効率化を図りたいときは「既存ビジネスを熟知したCAIO」、新規の収益源を創出したいときは「技術起点で事業を創造できるCAIO」、企業の在り方を変革したいときは「長期視点でビジョンを索敵できるCAIO」が適しているというのが、PwCの見立てだ。
PwCは先に紹介したCAIOの定義および上記のような捉え方に基づいて、CAIOが担う8つのアジェンダを図6に示すように明確化し、「企業価値向上に不可欠な全社的AI活用体制の設計を後押しする」(藤川氏)として、CAIOを包括支援するサービスを提供している。
最後に一言述べておきたいのは、企業としてAIをどう捉え、どう活用するかは、最重要の経営課題だと認識すべきだということだ。
PwCの調査はCAIOを対象としたものだが、今最も問われているのはCEO、すなわち経営トップの姿勢と覚悟だ。「AIはよく分からないので専門家に」と考えているようなら、もはやその会社はこれから生き残れないという強い危機感を持つべきだ。技術の詳しい中身は分からなくても「AIが世の中をどう変えるか」「自社にどんなインパクトをもたらすか」「なぜ、そんなインパクトがあるのか」の勘所は押さえておく必要がある。
CAIOの設置は、そうした経営トップの姿勢の表れの一つであり、そこに全社に向けてメッセージを発信するのが、経営トップがやるべきことだ。
重ねて強調しておく。AI時代に向けて今最も重要なのは、経営トップの姿勢と覚悟である。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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