マイクロソフトが語る「クラウド事業の勝負どころ」Weekly Memo(1/2 ページ)

日本マイクロソフトが先週、最大規模の新プライベートイベントを開催した。その中から同社が今、最も注力するクラウド事業の勝負どころについて筆者なりに考察してみたい。

» 2015年09月07日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]

「クラウドはパートナーにとってももうかる」

photo 基調講演を行う日本マイクロソフトの平野拓也代表執行役社長

 日本マイクロソフトが2015年9月2〜4日の3日間、最大規模の新プライベートイベント「FEST2015」を都内ホテルで開催した。新イベントはこれまで、パートナー企業、ユーザー企業、技術者に向けて個別に開催していたイベントを統合したものだという。

 この中で、初日の平野拓也社長による基調講演、および同日行われたパートナービジネス担当の高橋明宏執行役常務の記者会見から、同社が今、最も注力しているクラウド事業の勝負どころとして挙げた話を、筆者なりにピックアップして考察してみたい。

 まず、平野氏の話で最も印象深かったのは、「マイクロソフトのクラウドサービスを適用したパートナー企業はもうかる」と訴えたことだ。同氏はその根拠をIDCに委託したグローバル調査による数値で示した。

 それによると、まずクラウド事業の売り上げ規模が全体の50%以上を占めるパートナーは、50%未満のパートナーに比べて、新規顧客の獲得数が1.3倍、売り上げの増加率が1.4倍、利益の増加率が1.5倍になったという。

 また、ビジネスモデルからみた平均マージンとしては、従来のサーバやソフトウェアを対象とした再販が20%、システムインテグレーション(SI)が35%なのに対し、クラウドにおけるマネージドサービスが45%、さらにパッケージ化されたアプリケーションをクラウドサービスとして提供すれば65%となり、「クラウドへシフトしたパートナーの収益率は非常に高いことが分かった」(平野氏)という(図参照)。

photo 「マイクロソフトのクラウドサービスを適用したパートナー企業はもうかる」ことを説明

 ただ、従量課金をベースとしたクラウド事業は、製品を販売した際に一括して売り上げが立つビジネスモデルではないので、クラウドへシフトすればするほど、一定期間は売り上げも利益も落ち込む。そしてその一定期間を乗り越えるためには、クラウドの仕組みづくりに投じた先行投資も含めて、採算点を越える顧客数を確保する必要がある。

 そこから先、顧客数を増やしていければ、ストックビジネスとして安定した収益基盤を築けるが、逆に顧客数を確保できないと、いつまでたっても赤字状態が続く事態になる。

 そう考えると、平野氏が語った「売り上げ増加率1.4倍、利益増加率1.5倍」という数値は、筆者には疑問に映ったが、高橋氏にその点を問うたところ、「クラウドへいち早くシフトしたパートナーはすでに数年経過しており、着実に顧客を獲得して収益を上げている」として、調査結果は実態を表しているとのことだ。


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