第2回 データの管理、「サービスレベル」でしてみると……データで戦う企業のためのIT処方箋(2/2 ページ)

» 2016年02月16日 08時00分 公開
[森本雅之ITmedia]
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スムーズにサービスレベルを定義するには

 先に挙げた項目は、ITシステムにおいて数ある条件の中でも、次に説明する具体的なツール選定の際の区分や分類に大きくかかわるものです。特定業務ではより細かい、または独自の条件を加味して、もっと深い検討が必要となるものもあります。しかし、特にサービスレベルの定義にまだ慣れていないユーザー企業の場合、定義が細かくなればなるほど、企業内における合意形成――特にIT担当部門とユーザー部門との間での共通認識を持つことが難しくなってしまいます。

 まずは「標準化の段階」として、ユーザー部門の実業務フローを考慮しつつ、IT担当部門やCIOがリーダーシップを発揮し、組織横断的に定義することが非常に重要です。ここで言うリーダーシップにおいては、プロジェクト管理として合意形成の進捗を把握したり、一般的なITシステムとして過度な要求になっていないかをチェックしたりすることを中心に、ステークホルダー間の利害調整を主な目的として進めなくてはなりません。

 利害調整は常に難しい作業ですが、全体最適を考慮した上で部分適用を開始するというプロトタイプ的な運用ができた場合と、部分最適のシステム構成をもとに構成を似せていく、という個別運用になってしまった場合では、最終的なIT運用の効率性――つまりは、ROIに天と地ほどの差が生じてきます。

 企業文化によって、利害調整は予算獲得よりも難しい課題になるでしょう。この点は、ある程度の時間をかけてでも、きちんとした社内の合意を形成した上で進める必要があります。ただし時間がかかり過ぎると、今度は想定していた技術が陳腐化したり、業務処理が変わったりと、別の課題が出てしまいがちです。企業規模にもよりますが、検討作業は可能な限り少ない人数で構成されたチームで集中し、長くとも1〜3カ月程度で完了する方が良いでしょう。

 また、サービスレベルはシステム設計・選定時に定義して利用するだけでなく、システム稼働後にそのシステムが提供するサービスが予期した通りに動作しているかを測る明確なバロメーターになります。データは今後もさらに増え続けるので、ITシステムも年月が経つと業務プロセスの変更などに伴って要件や条件が変わってきます。サービスレベルを基準に、システム導入時だけでなく、その後の定期的なモニタリングと対策を行うことで、より健全なITシステムの運営と将来のシステム変更や更改時に適切な要件を追加できるようになります。

 時としてサービスレベルは、提案資料や予算申請の稟議書に記載されるだけになってしまうこともあります。一度、継続的に活用する方法を考えてみると良いでしょう。次回は、サービスレベルをもとに具体的なハードウェアとソフトウェアを選ぶ方法を目的別に紹介します。

執筆者紹介・森本雅之

ファルコンストア・ジャパン株式会社 代表取締役社長。2005年入社。シニアストレージアーキテクトおよびテクニカル・ディレクターを経て2014年5月より現職。15年以上に渡って災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)をテーマに、データ保護の観点からストレージを中心としたシステム設計や導入、サービス企画に携わる。現在はSoftware-Defined Storage技術によるシステム環境の近代化をテーマに活動中。


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