この連載では「データ活用」といった言葉が実ビジネスに結びつきつつある今、本当の意味で企業のITをどのようにしていくべきかを紐解きます。第1回は主役のデータにまつわるお話です。
昨今のコンピューティングの世界をみると、仮想サーバ環境やコンピューティングクラウドも一般的になりました。これらの仮想化技術をもとにしてシステムをより柔軟に設計し、迅速に展開できるようになりましたが、一方で管理が必要なインスタンスの数やデータ容量が爆発的に増加する原因にもなっています。
企業のITインフラを取り巻く環境や課題が変わってきている今、長期にわたって持続可能な運用環境を実現するためには、ユーザー企業の実業に基づく「業務」と業務で利用・生成される「データ」そのものの両方に着目してシステムを検討する必要が生まれてきました。この連載では、データを活用できる攻めのITインフラを検討するにあたって、注意すべきポイントや参考情報をご紹介したいと思います。
ひと昔前までの企業の資産は「ヒト・モノ・カネ」の3つで構成されるとされていましたが、近年は「ヒト・モノ・データ」と、情報そのものが資産であり、実業そのものであるというように企業価値の尺度が変わってきているとされます。これに伴い、対処すべき課題や要件も位置づけが変わってきています。
データが重要視される背景には、「日々発生している情報自体に価値がある」と理解され始めたことが挙げられます。具体的には、膨大なデータ(実績)から次のトレンドを見つけるビッグデータ解析、最適な方式を類推・演繹するプロフェッショナルシステム、人工知能やディープラーニングなどの技術が脚光を浴びています。
また業務自体にも、汎用品の大量生産からニーズに応じた多品種・少量生産へ主流が移り、さまざまな場所で競争も激化していることから、今まで以上に速いスピードでデータを活用できる柔軟な対応が求められつつあります。これは、もともとデータ活用が進んでいるEコマースやデータセンターといったIT関連の業種だけでなく、製造業での新規販売網の展開や金融IT(FinTech)など、さまざまな業種・分野に共通した変化と言えます。
このような環境においてデータを活用し、ビジネスの競争力を維持・向上するためには、データの保全をためらうような仕組みがあってはなりません。それに、ビジネスを直接支援するITインフラへ段階的に移行していく必要があります。その為には、この「価値あるデータ」をいかに効率よく管理するかが、ITインフラの肝です。
まず「データ管理をどう改善するか」という点を掘り下げていきます。次の3つの観点に着目してシステムのおおまかな要件を整理します(表・図1参照)。
これらの観点から現状を整理したうえで、自社が持つデータの種別を次のようなタイプ毎に必要となるシステム要件を洗い出し、標準化を進めていくことになります(図2参照)。
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