ITの“現場”を離れて、はじめて見えた景色――吉田優子さん企業ファイナンスの視点(1/3 ページ)

「ファイナンス」というと経理や会計の分野をイメージしがちだが、外資系の企業でその仕事は、財務戦略や資金調達、事業投資まで多岐にわたる。そんなITとは離れた業務にSEから転身した人がいる。会社の“裏側”を見ると仕事の見え方が変わるのだという。

» 2016年06月03日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 「なんで今、俺はこんな仕事をやっているんだ」「この数字が必要な意味が分からない……」

 会社に勤めていれば、一度はこんなふうに思った経験があるのではないだろうか。しかし、一見意味がないように感じる“やらされ仕事”も、視点や立場が変わればその見方や価値は一変する。

 IBMでファイナンシャル・アナリストとして働く吉田優子さんは、SEからファイナンス部門に移ったという異色の経歴を持つ。さまざまな部署を渡り歩く中で、「会社の中で起こる全ての物事には理由がある」と考えるようになったそうだ。

現場SEからオペレーションの業務への転身

photo 日本IBM 管理部門 ファイナンシャル・アナリスト 吉田優子さん

 吉田さんがIBMに入社したのは1998年。“教師”という職業に興味を持ち、大学で教育学科に入った吉田さんだったが、「社会に出てからでも遅くはない」と考えて就職を決意。旅行業界などさまざまな会社を受ける中で、IT系の企業も受けたという。

 「高校生のときに、親の仕事の都合でアメリカに留学していたのですが、あのころは国際電話も高く、日本の友達と手紙でしかやりとりできなくて、さびしかったことを覚えています。しかし、大学に入ったら共用PCで電子メールができるようになり、純粋に“ITってすごい”と思いました。ITが世の中を変えるということを実感したんです」(吉田さん)

 吉田さん自身はプログラミングの経験はなかったが、入社後はSEとして、クライアントの基幹システム構築や運用のサポートを約7年間務めた。プロジェクトのチームリーダーなども経験したが、トラブル対応でサーバルームで夜を明かしたこともあるなど「SEのころが一番体力的にきつかった」と彼女は振り返る。当時、苦楽を共にした仲間は10年以上たった今でも親交があるそうだ。

 今、自分が行っている仕事は会社にとってどういう意味があるのか――。忙しい日々の中で、吉田さんは次第に“バックエンド”の仕事に興味を持つようになった。会社の仕組みやビジネス、そして「現場に指示を出すところを見てみたい」という思いから、事業のオペレーションを行う部門へと移った。

 自らの希望がかなった形だが、この異動を機に吉田さんはさまざまな部署でキャリアを積んでいくことになる。

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