ITの“現場”を離れて、はじめて見えた景色――吉田優子さん企業ファイナンスの視点(2/3 ページ)

» 2016年06月03日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

“現場”を離れてはじめて見えた景色

 オペレーション部門の仕事は「イメージと合っていた」と話す吉田さん。事業部長を補佐する役職についていた時期もあり、彼らの視点に触れる中で、仕事に対する考え方が変わったという。

 「特に、なぜこの数字を会社に提出しなければならないのか、という点がよく分かりました。今までお客さまのためになると思った仕事は一生懸命やってきたのですが、それ以外の業務については『ちゃんと仕事してるんだから、口出ししないでよ』と思っていた部分もありました。そういう業務の必要性が分かり、すっきりとした気持ちで取り組めるようになりました」(吉田さん)

 1年半ほどオペレーションの仕事を行った後、「社外の人と関わる仕事がしたい」「IT以外のことにもチャレンジしたい」と公募制度を利用して購買の部門へ。備品の調達から、業務委託先との価格交渉まで幅広い業務を行った。施設設備の管理や更新なども行うようになり、「自分がオーナーとなって会社が変わる瞬間を見れる」ことが大きなモチベーションになったという。

社会貢献プログラムでエクアドルへ

 しかし、吉田さんの異動はまだ続く。上司の推薦でCFOの補佐を約半年間務め、2012年にファイナンス部門のアナリストに抜てきされた。もといた部門に戻るという選択肢もあったが「やらないで後悔するより、やって後悔したほうがいい」という考えで新たな部署にチャレンジ。予算を作ったり、予算達成への方法をあらゆる角度から分析して、各事業に割り振ったりと、これもまた経験したことがない仕事だったが、リーダーを務め上げた。

 その期間には、同社の社会貢献プログラムに応募してエクアドルにも行っている。世界中から集まった15人の社員が協力し、約1カ月という期間で現地NPO法人のコンサルティングを行った。

photo 社会貢献プログラムでエクアドルに行った際に訪れた、隣国ペルーの世界遺産「マチュピチュ遺跡」

 「現地のフードバンク(※)でプロジェクトを行ったのですが、発展途上国のNPOということもあり、組織やプロセスの課題が山のようにありました。私たちは、彼らがフードバンクの国際団体の認証を得られるよう支援したのです」(吉田さん)

※フードバンク……食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設や生活困窮者などへ提供する団体、またはその活動

 SE、オペレーション、購買、ファイナンス――さまざまな部署での経験がプロジェクトで生き、最終的に認証を得ることができたという。プログラムが終わり、各国へ戻った仲間とは今でも親交があり、旅行の際に会いに行った人もいるそうだ。

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