有力なエンタープライズITベンダーが相次いで、クラウドサービス事業に一層注力する動きが目立ってきた。国内クラウド市場は今後、一段とホットな戦いになりそうだ。
「2020年までに国内でクラウドシェアトップを獲得するとともに、社会に貢献するクラウドカンパニーになる」
日本オラクルの杉原博茂社長兼CEOは6月30日、同社が開いた2017年度(2017年5月期)の事業戦略説明会でこう“宣言”した。「シェアトップ」はかねてビジョンに掲げているが、今回これに「社会に貢献する」との表現を付け加えた格好だ。
データベースソフト市場を大きくリードする同社は、企業の基幹システムなどエンタープライズITを支えてきた有力ベンダーの1社である。クラウドにおいても社会に貢献することを掲げたのは、まさしくエンタープライズITベンダーとしての使命と誇りの成せる業だろう。
とはいえ、同社はクラウドサービス事業に出遅れた。そこで杉原氏は2年余り前に経営トップに就いて以来、同事業に注力してきた。
2016年度(2016年5月期)決算では、クラウド事業の売上高が前年度比39.3%増と伸び、成果は確実に表れた。しかも全体の売上高および利益も過去最高を更新し、ソフトウェアの新規ライセンスについても同3.9%増を果たすなど、まさに胸を張れる業績を記録した。
では、2017年度の重点事業戦略はどのようなものか。全体の内容についてはこちらを参照いただくとして、クラウド事業に関しては「ERP Cloudビジネスを加速」「中堅中小企業の開拓」「パートナーとの協業強化」などによって、さらに高い成長を目指すとしている。
日本オラクルのほか、SAPジャパンや富士通などのエンタープライズITベンダーも最近、クラウドサービス事業の強化を打ち出している。
SAPジャパンは6月上旬、PaaS型クラウドサービス「SAP HANA Cloud Platform」の日本での事業展開を強化すると発表した。同サービスを提供するデータセンターを国内2カ所(東京と大阪)に新設するのが強化策の柱だ。この点については、2016年6月13日掲載の本コラム「SAPが『HANA Cloud Platform』に込めた大いなる野望」で取り上げているので参照いただきたい。
富士通については5月中旬、IaaS/PaaS型クラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」(K5)を中核としたデジタルビジネスプラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc」の強化を発表した。
顧客企業の複雑化したITインフラの最適化に向け、システムの移行計画の立案から設計、システム構築までを総合的に支援するサービスや、既存システムのK5へのスムーズな移行を可能にするサービスなどを新たに提供するというのが強化策の柱である。
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