名古屋医療センター、DB統合機能を持つWeb型電子カルテシステムを導入

名古屋医療センターは、富士通のWeb型電子カルテシステム「HOPE LifeMark-HX」を導入、約1300人の職員が利用を始めた。

» 2016年07月11日 06時30分 公開
[ITmedia]

 富士通は7月8日、国立病院機構の名古屋医療センターがWeb型電子カルテシステム「FUJITSU ヘルスケアソリューション HOPE LifeMark-HX」(HOPE LifeMark-HX)を導入し、稼働を開始させたと発表した。

 名古屋医療センターは740床を擁する。地域に根付いた診療を行い、がんや循環器疾患、血液難病、内分泌・代謝疾患などへの医療を提供するほか、エイズやリウマチなどにも対応し、臨床研究も行っている。

 HOPE LifeMark-HXは、300床以上の大規模医療機関向けWeb型電子カルテシステムで、データウェアハウスの機能を使って電子カルテシステムだけでなく、医事会計システムや各部門で利用しているさまざまなシステムのデータベースを統合して活用する機能を持つ。また、各種のデータを加工・抽出できるBIツールを搭載。システム利用者の目的に応じて、薬歴・検査結果・病名・バイタルなどの電子カルテ画面のパーツ(ウィジェット)を自由に配置できる。

 名古屋医療センターでは、HOPE LifeMark-HXのBI機能などを活用して、医師ごとの診療状況や病院の経営状況、患者の症例など、さまざまな観点からデータを分析、医療の質向上の促進を図っていく。

HOPE LifeMark-HXの各機能と電子カルテ記事の連動例(出典:富士通)

 まず同センターでは、HOPE LifeMark-HX導入後、検査や投薬、注射などの指示を各部門に伝達するオーダリングシステムや電子カルテシステム、医事会計システム、各部門システムのデータベースを統合運用することで、B型肝炎ウイルスの再活性化予防のためのPDCAサイクルを回す取り組みを実施している。

システム構成イメージ(同)

 このサイクルは、検査・処方・外来予約・入院予約データをそれぞれ連携させて患者データに出力。薬剤師がチェックを行い、医師へフィードバックする。B型肝炎は、抗がん剤投与の影響を受けて活性化する可能性があるとされ、一連のPDCAサイクル運用で、がん薬物療法前のHBs抗原検査をはじめとする関連検査の啓蒙活動を漏れなく実施できるようになるという。

 また同センターは電子カルテの利用で、患者プロファイルや問診表、手術記録、経過表など各テンプレートに入力する用語の標準化や、記述方法の統一がされておらず、診療情報の活用がスムーズにできないという課題を抱えていた。HOPE LifeMark-HX導入後は、複数のテンプレートで項目の共通化を進め、電子カルテの患者プロファイルと看護支援の看護プロファイルの連携を図るなど、情報の整理と入力の簡素化を図っている。

 名古屋医療センターの今回の取り組みでは、部門をまたいだデータベース統合とデータの連携が、効果的なPDCAサイクルを回すエンジンとなり、医療サービスの向上につながった。また、BIツールを搭載しているソリューションを活用することで、医師の実績や病院の経営分析などをさまざまな角度から分析できるようになり、これもサービスの質を上げる大きな要素となる。業務関連のデータベースの統合・連携は、データ活用の簡素化、運用負荷低減に主眼が置かれがちだが、これをサービスの質的向上にまでつなげたという意味で、同センターの事例は、他の業種でも応用できるさまざまなヒントを含んでいるのではないだろうか。

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