クラウドだから、値上げなども認めざるを得ないといった、いわばサービス側の“いいなり”になるリスクが高まるとはいえません。
クラウドサービスの基盤は、オープンテクノロジーです。従って、他のサービスに乗り換えることは可能です。
ただし、各クラウドサービスは、ユーザーの利便性を考えて、独自のサービスを提供しています。それをうまく使うことは、構築や運用の生産性を高めコストを下げることに役立ちます。しかし、一方で過度に依存してしまうと、乗り換えが難しくなってしまうこともまた事実です。
これは、自社で所有するシステムの場合でも同じです。独自の仕組みを必要以上に作り込み、それに依存するシステムを作ってしまうと、もっといいテクノロジーが登場しても、容易に利用できなくなってしまいます。
大切なことは、オープンであることと利便性をうまくバランスを取ってシステムを設計することです。また、システムの基盤がオープンであること、さらに、各サービス事業者が同様のオープンシステム基盤で作られていることで、価格競争が繰り広げられているのが現実です。それらをうまく利用する、利用者側としての取り組みが必要になります。
2013年5月31日に米国大使館で行われたセミナーで、「米国が日本のデータセンターのデータを直接差し押さえることはない」という見解が示されています。
パトリオット法は、2001年の同時多発テロ事件後に、捜査機関の権限を拡大する法律として成立しました。捜査令状に基づいて、情報通信に関連しては、電話回線の傍受、インターネットサービス事業者における通信傍受、サーバなどの機器の差し押さえ、電子メールやボイスメールの入手、プライバシー情報の提出などを求めることを可能としています。
ただし、この法律は米国内の法律であり、米国のクラウド事業者が日本国内にデータセンターを設置する場合、捜査権はわが国にありますから、必要とあれば米国からの要請を受け、国内法に照らし合わせて対応するというのが現実的といえるでしょう。
米国に限ったはありませんが、海外のデータセンターを使用する場合は、その国の法律や捜査権が及ぶことになりますから、そのリスクを考慮した上でデータやアプリケーションなどの配置を考える必要があります。
なお、考慮すべき法律はパトリオット法以外にも、下記のようなものがあります。これらは、「クラウドだから」という問題ではなく、情報システムを扱う上では考慮しなくてはなりません。
その他、クラウドと法律に関し、参考になる情報を以下に紹介しておきます。
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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