「IT部門が関与しない予算のある企業が6割超」という現実に向き合う3つの視点ITソリューション塾(1/2 ページ)

「IT部門が関与しない予算のある企業が6割超」という調査結果が出ている現実に、IT部門はどう向き合っていけばいいのか。役割を見直すためのヒントを紹介します。

» 2016年09月28日 14時00分 公開

今、情報システム部門に求められる役割とは

 受託開発ビジネスの構造的問題は、人間の作業能力の限界を超えられないことです。例えば、美容師や料理人がそうであるように、1人の人間ができる仕事はその人間の能力の範囲であって、その能力を何倍にも引き上げることは困難です。機械を使って自動化が可能な工場のように、1人の人間のできることを何倍、何十倍に拡張することはできません。

 もちろん一人一人が技術を極めることで労働単価を高めることはできますが、それらを組織的に拡大することは容易なことではありません。「カリスマ」といわれるごく限られた人がそうなったとしても、組織全体を「カリスマ」にすることはできません。ですから、標準化や汎用化といった手法を用いて、誰もができる手順を作り、マニュアルによって徹底させるしかなかったのです。その手順を整え、それを順守できる人材を育てることで「商品」としての受託開発を成り立たせてきたわけです。

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 一方、手順を見直し、改善することは「商品」の生産効率を上げることではなく、品質を維持することに力点が置かれてきました。もし生産効率を上げてしまえば、作業工数は減少し収益が下がってしまいます。これは受託開発ビジネスを成業する企業にとっては事業目的と相反する行為となるからです。ですから、提供した商品にお客さまからのクレームや作業の手戻りが起こらず、余計なコスト負担を強いられないようにするための「品質向上」に力点が置かれてきました。

 このようなビジネス構造を強いてきた最も大きな原因は「瑕疵(かし)担保」の存在です。工数で金額を固定させられ、完成責任を求められる契約形態の中で収益を維持するためには、このようなやり方しかなかったといってもいいでしょう。

 情報システムが業務の効率化や生産性を向上させる道具として「本業ではない」使い方であれば、このようなやり方でもビジネスは成り立ってきました。しかし、ビジネスはITと一体化し、企業の競争力や差別化を支える要件として意識されるようになり、この前提が崩れはじめています。

IT部門が関与しないIT予算は6割超

 IDC Japanは、IT投資動向に関する国内CIO調査を行い、このような結果を公表しています。またこの調査報告の中で、「シャドーITなどは含まれない。そのため、実際はもっと多い可能性はあるだろう」とも指摘しています。

 このような背景には、ITに関わるツールやサービスが充実し、しかもそれを使いこなすのに高い専門性が必ずしも必要なくなったことが考えられます。加えて、ITを武器にしてビジネスの差別化を図りたい事業部門が、新しいテクノロジーや方法に積極的ではなく、加速するビジネススピードに対応できないIT部門の関与を足かせと考えているためだとも考えられます。そんなIT部門のやり方に追従してきたSI事業者も一蓮托生(いちれんたくしょう)として排除される場合も十分あるわけです。

「QCDを守って仕様書通りのシステムを作ること」から「ビジネスの成功に貢献すること」へ

 情報システムに求められる役割が大きく変わってきていることを受け入れなければなりません。それを前提に自分たちのビジネスを再定義し、新たな収益構造を築かなければなりません。

 ではどうすればいいのでしょうか。

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