研究成果は、高速道路入り口の逆走防止、注意喚起情報の表示、大規模補修工事による交通影響の改善などに生かし、道路利用者の安全・安心・快適性向上を目指すという。
阪神高速道路と富士通交通・道路データサービス(FTRD)は11月8日、商用車プローブデータを活用した交通分析手法を確立したと発表した。
両社は、2015年3月から「交通ビッグデータの活用による社会価値創出に関する共同研究」を実施している。今回の発表は、研究内容の1つである「道路利用者の安全・安心・快適性向上等に寄与するGPSデータ等を用いた交通分析手法」に関する研究で、商用車のプローブデータの有用性に関する研究成果をまとめたもの。
成果の1つとして、近年社会問題化している高速道路の逆走に対して、逆走につながる「高速道路への進入間違い」を防止することが重要であるとし、プローブデータを分析して、問題のある車両の挙動を抽出・把握する手法を開発し、高速道路入口案内の充実に向けた対策の着眼点を示すことが可能となったとしている。
情報提供の高度化に向けた取り組みでは、最適な情報提供の在り方を検討する目的で、文字情報板での表示内容や表示方法がドライバーに与える影響を把握すべく、走行車両の挙動変化を分析。プローブデータの活用により、高速道路本線上の文字情報板で注意喚起情報を表示した場合、その通過直後に走行速度が低下する傾向が確認できたという。結果、文字情報板の情報提供による走行安全性向上のための着眼点を整理できたという。
また、阪神高速は10日間程度の通行止めを伴う大規模補修工事を定期的に実施しているが、このような工事による交通影響を最小限に留め、工事回数の削減と工事自体の効率化を図るため、過去の事例分析を実施。車両ID付の経路データを活用して、大規模補修工事による交通影響をこれまでより面的かつ経時的に把握でき、出発時刻や到着時刻の変化などの従来把握が困難だった内容も把握できることを示せたとしている。
さらに、快適性と安全性確保のため、阪神高速ではこれまで顕在化した自然渋滞発生箇所や交通事故対策箇所を中心に対策を実施してきたが、快適性、安全性の向上を目的に潜在要因を抽出するため、自由流における速度分布状況を把握し、その活用可能性に関する事例分析を実施。1秒単位のドットデータを活用して短区間ごとの速度分布を分析し、速度超過しやすい箇所や道路線形などでは説明できない速度低下箇所の抽出、速度抑制対策の効果把握が可能となったとしている。
両社は今後も引き続き、IoT、交通ビッグデータを活用した交通分析手法の研究を推進し、「交通ビッグデータの活用による社会価値創出」を進めると説明している。
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