攻撃者が激戦州の投票マシンにマルウェアを感染させ、自分たちが当選させたい候補の票を水増しさせた可能性が指摘されている。
米民主党のヒラリー・クリントン候補が敗北を喫した米大統領選挙について、一部の州の集計が不正に操作されていた可能性が指摘され、コンピューターサイエンスの専門家などがクリントン陣営との間で再集計の申し立てについて協議しているという。ミシガン大学のアレックス・ホルダーマン教授が11月23日の投稿で明らかにした。
ホルダーマン教授によると、今回の大統領選挙は投票日前から相次ぐサイバー攻撃に見舞われ、民主党全国委員会の電子メールシステムへの不正侵入、イリノイ州やアリゾナ州での有権者登録システムへの不正侵入などが確認されていた。いずれについても米連邦当局の高官が、ロシア政府が関与したとの見方を示していたという。
本選の投票結果も不正操作されていたと想定した場合、考えられるシナリオとしてホルダーマン教授は、攻撃者が事前に選管当局のコンピュータに侵入する方法を把握し、投票日が近付いた時点で勝敗を分ける激戦州の投票マシンにマルウェアを感染させ、自分たちが当選させたい候補の票を水増しさせたという説を披露した。
マルウェアは投票日前のテストの時には身を隠し、投票が始まると作動して、投票が終わると自らを消去する仕組みだったと同教授は推定。「数年前であればSFのような話だと思ったかもしれないが、2016年は選挙への介入を狙った前例のないサイバー攻撃が発生していた」と指摘する。
ただ、「選挙結果が多くの事前の世論調査とかけ離れていたのは、恐らくサイバー攻撃のせいではなく、投票そのものに体系的な誤りがあった可能性の方が大きい」とも同教授は言う。しかしいずれにしても、「サイバー攻撃によって結果が改ざんされたかどうかを知る唯一の方法は、物理的証拠を綿密に調べることだ」と述べ、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアといった激戦州の紙の投票用紙と投票マシンを調べることを提案している。
「候補者が数日以内に行動して再集計を申し立てない限り、こうした証拠は調べられないまま終わる」と同教授は危機感を募らせている。
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