抵抗は、実は「悪」ではなく、「歓迎」すべきもの!?――“抵抗勢力”と向き合うには、まずは「抵抗とは何か?」を知ることが大切です。
この記事は榊巻亮氏のブログ「榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』」より転載、編集しています。
「抵抗勢力との向き合い方」を解説する連載の2回目は「抵抗とは何か?」。抵抗は「忌み嫌う」べきもの、「避ける」べきものと捉えがちだが、僕はそうではないと思っている。むしろ歓迎してほしい。今回はそんな話をしよう。
そもそも、なぜ抵抗が発生するのだろうか?
変革を起こそうとすると抵抗は必ず発生する。必ず、である。実は、人が抵抗するのは自然の理のようだ。
行動経済学の世界では研究が進んでおり、抵抗に関するさまざまなメカニズムが明らかにされている。幾つか代表的な例を紹介しよう。
他にも、確証性バイアス、サンクコスト効果など、変化を嫌う原因となるメカニズムが数多く明らかにされている。
これらの心理作用は、誰もが本能的に持っているものらしい。つまり、変革に対して抵抗が起こるのはある意味仕方がないこと、当然のことなのだ。生理現象にいちいち腹を立てても仕方ない。
変革を推し進める立場にいると、かたくなに抵抗する人を「保守的だから」「何も分かってないヤツ」「視点が低いから」「昔から何もしないヤツだ」と見てしまいがちだが、誰も会社を転覆させようなどとは思っていない。
「会社をよくしたい」という思いは一緒であり、本当の抵抗勢力はそうそういないのだ。
「抵抗勢力との向き合い方」の第1章本文から事例を1つ、引用してみる。
【あいつらにこれ以上負荷は掛けられない】
契約の進ちょく状況をシステム上で管理し、誰の目にも見えるようにする施策が動いていた時のことだ。
これまで契約の状況は担当者の頭のなかで管理されていたのだが、承認の状況が見えなかったり、滞ったままの契約が続出したりと管理の手間が増えていたのだ。システム上で契約の管理ができればさまざまな負荷軽減になることが分かっていた。
ところが、現場に施策の説明をしていた時、事務サポート部(各部の事務業務を引き受け、サポートする部署)の部長がすごいけんまくでPJルームにやってきた。
「契約の進ちょく状況をシステムに入力するなんて話があるらしいな? うちの部署ではこれ以上仕事は増やせないぞ!? どういうつもりだ!」と完全にお怒りだった。PJメンバーも一瞬構えてしまったが、よくよく話を聞くと部長の話はこうだった。
部長は、改革そのものに反対しているわけではなかった。進ちょくを入力すること自体は重要だと思ってくれている、有効性も理解してくれている。だが、今それを受け入れることはできない。という主張だった。一瞬「抵抗勢力か!?」と思った自分が恥ずかしかった。この部長は部長の立場で、会社のことを本気で考えていたのだ。彼の立場からすると、プロジェクトチームの方が悪に見えていたのだ。
こんな風に、抵抗する側にも理屈があり、正義がある。単に駄々をこねているわけではないのだ。まして会社を陥れようとしているわけではない。
だから変革推進側が正しいなどと思ってはいけない。相手の立場で、相手の主張と感情を深く理解しなければならない。これが抵抗対応の難しさなのである。
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