ARM版Windows 10は、最初はQualcommのSnapdragon 835が動作プラットフォームとなる。Windows 10 MobileがサポートしているSnapdragon 820/617は対象外となりそうだ。
Snapdragon 835は、Qualcommのプロセッサとしてはハイエンドモデルとなるため高コストだ。実際、Snapdragon 835を使ったスマートフォンは、軒並み10万円ほどの製品となっている。
Qualcommでは、ARM版Windows 10が動作するプラットフォームとしては、2in1タブレットもしくは、超薄型で軽いノートPCになると予想している(スマートフォンなどのカテゴリーではない)。また、Snapdragon 835を採用したスマートフォンの価格から見れば、10万円〜15万円ほどの値段になるのではと予想される(製品のスペックによっては、10万円を切る製品があるかもしれない)。
OSは、Windows 10 Mobileなどと同じく、PCにプリインストールする形で入ることになる(ARM版Windows 10のパッケージやARMプロセッサを使用したマザーボード単体は販売されないだろう)。
価格面からみれば、IntelのCore MシリーズやCore iシリーズを搭載する製品とそれほど変わらないだろう。ただ、ARM版Windows 10では、Snapdragon 835プロセッサと通信チップのX16の組み合わせが利用できるので、常にネットワークに接続できるノートPC/タブレットになるだろう。
Microsoftは、Computexにおいて、Always Connected PCというコンセプトを打ち出している。スマートフォンで使われている、Snapdragon 835プロセッサとLTEをサポートした通信チップX16の組み合わせにより、常にネットワークに接続していても、長時間のバッテリー動作を可能にする(Always Connected PCは、Qualcommだけでなく、Intelとも協力している)。
Always Connected PCは、eSIMを搭載することで、SIMカードを入れなくても、Windows上から通信キャリアとの契約もできる。海外に持っていったときにも、海外の通信キャリアが旅行者向けの料金プランを用意していれば、その料金プランを契約するだけで、すぐにでも海外で通信を行うことが可能になるかもしれない。
ARM版Windows 10を搭載したPCやタブレットは、Lenovo、HP、ASUSなどが2017年の年末商戦までに発売する予定だ。
ARM版Windows 10については、企業では当面は様子見になるだろう。MicrosoftはフルスペックのWindows 10だと言っているが、実際にリリースされるまで、本当に制限がないのか、といった点を確認する必要がある。また、社内で利用している業務アプリケーション(Win32)が本当に動作するのか、満足いくパフォーマンスで動作するのかなどもチェックする必要がある。
ただ多くの社員は、Officeソフトなどを利用していることが多いため、ARM版Windows 10でも問題は少ないだろう。独自開発の業務アプリケーションも、マルチデバイス対応ということを考えれば、Webアプリケーション化されているなら、問題は起こらないと思われる。
ARM版Windows 10は、なによりも低消費電力で高い性能を持つARMプロセッサと、各国キャリアの認証を取得しているQualcommの通信チップを使うことで、全世界どこに行っても通信しながら、バッテリーで長時間動作するPCやタブレットが手に入ることが強み。この点は、企業にとってもメリットがある。
不確定要素としては、IntelがARM版Windowsでのx86エミュレーション機能に関して、自社の権利を侵害している可能性があると懸念していることだ。最終的に製品がリリースされていないため、懸念という状態だが、製品化された時に訴訟も辞さず、という態度を表明している。このあたりは、実際にARM版Windows 10がリリースされてからの推移を見守る必要があるだろう。個人的には、MicrosoftとIntelが何らかの折り合いを付けると思っている。
まずは、2017年の年末商戦にでてくる製品を見る必要がある。2018年にはARM版Windows 10が動作するプロセッサの種類も増えてきて、低価格化していくだろう。本格的に企業で導入するなら、2018年から2019年になるのだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.