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人工知能(機械学習)ブームが起きている今、ビジネスの世界では“データの奪い合い“が始まっています。製造業、小売業など、あらゆる産業の現場だけでなく、日々の生活の中にも、データを計測するIoTデバイスが登場して、私たちの日常からあふれるデータを計測しているのです。
連載の第5回で紹介したように、機械学習は今手元にあるデータを基に判断を行います。その点で、そのデータによって人工知能の価値が決まると言っても過言ではありません。
機械学習を使ったシステムを成功させるポイントは、膨大でさまざまな種類のデータを、安い基盤に蓄積して、いかに素早く学習し、結果を得るかだと私は考えます。つまり、データ、基盤、アルゴリズムの3つが重要であり、競争優位性を持つ要素なのです。
しかし、ここ数年の「クラウドの進化」や「GPUによる学習」というイノベーションのおかげで、多少のお金があれば、誰でも基盤を購入できるようになりました。今では、この要素で他社と差をつけるのは難しいでしょう。
またアルゴリズムについても、AGFA(Apple、Google、Facebook、Amazon)と呼ばれる4強やMicrosoftやBaiduといった大企業がディープラーニングに関するオープンソースを提供しています。それらを使えば、誰でも気軽に人工知能を開発できるようになったことから、これも他社と差別化がしづらくなっています。
つまり、最後に残ったデータだけが、他社との差別化要因として存在し続けているのです。他社では得られないデータを、いかにして自社で計測するか? そのデータにこそ、貴重な価値があります。他社にないデータを含めて学習することで、より精度の高いアウトプットが期待できるならば、データはまさに「21世紀の石油」といえるわけです。
今、ビジネスに最も重要なデータとして注目を集めるのが「ライフログ(Web内外の個人の活動記録)」です。現在、AGFAがこぞってスマートスピーカーを開発していますが、個人の住居に設置し、横断的にライフログを計測できるシステムと考えれば、その理由もうなずけます。
しかし、ここで気になるのはプライバシーの問題です。日本では、2017年5月に「改正個人情報保護法」が施行されました。この法律は、いわゆる“ビッグデータ時代”に対応した法改正として多くの注目を集めた一方で、ビジネスに悪影響を与えるという見方をする人もいます。このままでは、日本は人工知能関連の開発で世界に負けてしまうのでしょうか。
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