GEのデジタル変革、カギは社内カルチャーの改革にあり(2/2 ページ)

» 2017年11月01日 08時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]
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社内バイブルから評価制度まで変える

 設立から125年という長い歴史を持つ同社で、一言で社内カルチャーを変えるといっても、その道筋が平たんでないことは容易に想像が付く。そこで、GEでは社内カルチャーを根底から変えるべく「GE Beliefs」「FastWork」「Perfomance Development」という3つの施策に取り組んでいる。

 熊谷氏は「かつてはGE Valueという全世界共通の社内バイブルがあった。ただ、時代に沿わない表現があったり、今のデジタル世代には受けないということが分かったりしたことで、時代にあった動機づけができるような心に訴えかけるようなメッセージに変えた」と経緯に触れた。

 さらに「GE Valueを日本で導入する際、社員にまず英語で紹介して『みなさんでピンとくるような日本語訳を応募して下さい』と募集して社員のアイデアをまとめたのが今の形。納得感のある腹落ちしやすい内容になり、それがいい結果につながったと思う」と指摘した。

photo 新たに制定した「GE Beliefs」

 一方のFastWorkは、社員研修の講師に依頼したエリック・リースに学んだもので、「小さくスタートして成功したら大きくする、失敗したらすぐやめる、行動しながら微調整というITの世界では当たり前のこと」(熊谷氏)

 とはいえ、これまで社内で完璧なものを作り上げてから世に出してきたGEのやり方とは真逆であり、当初は社内での抵抗が非常にあったとのこと(熊谷氏)。そこでトレーニングをして、意義の理解を進めると徐々に抵抗も薄れていき、効果が実感できるようになると社内に浸透するようになったという。

 加えて熊谷氏は「ここ日本で、FastWorkはチャンスだよと社内にメッセージを出した。というのも、GE内での日本のプレゼンスは昔の高度成長時代をピークとして徐々に落ちてしまい、同時に社員のモチベーションも下がっていた。そこに、とりあえず小さく速く挑戦するという流れがきて、社内で気軽に提案しやすくなり、すぐに行動することで実行力が付いていった。日本でも浸透が進み、今では全社員で共有している」と工夫を語った。

photo 従来の価値観とは真逆の「FastWork」を取り入れた

 社内改革は社員の評価制度にも当然およぶ。

 熊谷氏は「これまでは年に1回、上長とディスカッションをして評価を行っていたが、今の若い世代は1年前のことを時間がたって評価するなんてとんでもないという考え方をする人が多かった。そこで、もっと効果的な方法を考えようということでPerfomance Development制度を導入した」と説明する。

 全社員のPCやスマートフォンにチャットのようなPDツールを導入し、上司や同僚、部下から気づき(インサイト)をタイムリーに共有できるようにしたという。「すべての社員に対し、自分に対する気づきが入ってくる状態にした。それを活かすも殺すも本人次第だが、本人の気づきが一番育つという考え方だ。さらに相手にメッセージを送る際に、Continue/Considerという項目を選ぶ必要があるが、導入当初はContinueが非常に多く、最初はConsiderを送りにくい風潮があった。実際、私も最初にConsiderが来たときはムッとしたが、よくよく考えると、社員が私のことをこんなにも考えてくれているということが分かってお礼をした」と苦笑交じりに語る。

 同社では上司との面談も年1回から最低月1回に頻度を上げ、これまでの社員レーティング制度「9-block」を廃止するなど、若い人にとって働きやすい環境を整えるのに腐心しているという。

 「GEはまだまだ変革の途中だが、現会長兼CEOのジョン・フラナリーが『Our Future is Digital』と言うように、GEの未来はデジタルと共にあるということだけは決まっている。これからの新しい世界で勝ち組になるためには、今までのようなハードウェアのテクノロジーだけに頼っているのはダメで、それに付加価値を付けて、お客さまの結果につながるようなソリューションを提供するのが大事。そこで差別化を図って勝ち組になるという方針をこれからも続けるために、今後もデジタルの分野に投資をし続けて、新しい時代の新しいGEを作っていく」と熊谷氏はまとめた。

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