人間の代わりに働いてくれるソフトウェアロボット。前回の記事では、RPAをそのように説明しましたが、まだ発展途上の技術であるためか、その能力を誤解されているケースが多々あります。今回はRPAの特長と限界を、人間に置き換えて説明します。
皆さんは「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(Do Androids Dream Of Electric Sheep?)」という小説をご存じですか? 今から半世紀前に発表された、米SF作家のフィリップ・キンドレド・ディック氏が書いた作品で、「映画を見たことがある」という方もいると思います。
この小説では、人間と見た目が変わらない「ネクサス6型」と呼ばれるアンドロイド、つまり「ロボット」が登場します。彼らが人間とそっくりの見た目なのは、人間を代替する労働力を目指したためですが、RPAもまた、形はなくとも目指すところは“人間を代替する労働力”だと言えます。
ただ、まだ発展途上の技術であるためか、現状のRPAについて、誤った捉えられ方をしていることが多々あります。前回の記事で、RPAは「人間の代わりをする」とお伝えしました。今回の記事では、それがどういうことなのか、分かりやすく人間に置き換えて話をしようと思います。
あなたはあるチームの責任者だとします。そこへ、新人研修を終えたAさんが配属されてきました。Aさんは、WordやExcel、メールソフトといった業務に使うPCの基本的な操作は研修でみっちり鍛えられていますが、新人なのでもちろん業務経験はありません。
そんなAさんに、あなたは業務をお願いすることになるわけですが「早速だが、わが事業部の売上を○億円成長させるプランを考え、実行したまえ」と指示を出す人は、まずいないでしょう(実は、私が新人のころに本当に起こった話なのですが)。一般的には、業務に慣れてもらうため、日々のルーチンワークや簡単な作業からお願いするケースが多いと思います。
RPAの場合も同様で、WebブラウザやExcelといったデスクトップ上のアプリケーションを操作する強力な機能を持っているものの、それを使って、ロボットにどんな仕事を“お願い”するかは、人間が考え、ソフトウェアに合う形で伝える必要があります。「ねえ、これやっといて」と曖昧な指示で動けるほど、現在のRPAは柔軟ではありません。
また、人間が知識や経験をもとに、じっくり考えて答えを出していくような正解のない仕事や、関係者にプレゼンしたり説得したり、柔軟さが求められるような対人コミュニケーションにも現時点では使えないでしょう。「人間の代わりをする」と一口に言っても、人間の行動は多種多様で、RPAが担えるのはあくまでその“一部”なのです。
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