数千規模のAIエージェントをどう統制する? IBMが製品群を発表AIニュースピックアップ

複数のAIエージェントを活用に当たって、いかに統制するかが課題として浮上している。こうした課題の解消に向けてIBMが提供する、AIオペレーティングモデルと製品群とは。

» 2026年05月25日 15時30分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 AIに投資する企業が増える一方で、AIを事業の中核で本格運用し、成果が出ているケースは限られている。IBMのアービンド・クリシュナ氏(会長兼CEO)は「成果を上げている企業は、より多くのAIを導入しているのではない。AIを個別プロジェクトの集合体として捉える考え方から脱却し、事業の運営方法そのものを再設計している」と指摘する。

 AI活用を前提とした企業変革に向け、IBMはエンタープライズ向けAIとハイブリッドクラウド管理機能の拡張を年次イベント「Think 2026」(2026年5月4〜7日《現地時間》)で発表した。

AIオペレーティングモデルの4つの統合システム

 発表内容にはマルチエージェントのオーケストレーションを担う次世代の「IBM watsonx Orchestrate」(watsonx Orchestrate)、AIにリアルタイムデータを提供する「IBM Confluent」(Confluent)、インテリジェントな運用を担う「IBM Concertプラットフォーム」(Concert)、運用上の独立性を支える「IBM Sovereign Core」(Sovereign Core)が含まれる。

 IBMが提示する新たなAIオペレーティングモデルは、相互に連携する次の4つの統合システムを基盤とする。

  1. エージェント:事業全体にわたって実行・適応する、協調して機能するAI
  2. データ:組織全体で状況を共通認識として把握するための、リアルタイムで接続された情報
  3. オートメーション:業務プロセス全体に展開するためのエンド・ツー・エンドのインフラと自動化されたワークフロー
  4. ハイブリッド:主権性、ガバナンス、セキュリティを確保し、AIを一貫した制御下で稼働させるための運用上の独立性

 IBMが提示するオペレーティングモデルは、これらを単一の枠組みで連携させる。今回の発表は、これらのモデルを構成するIBM製品ポートフォリオを拡張するものだ。

エージェント:大規模なオーケストレーションと開発

 異なるチームや異なるプラットフォームで構築された数千規模のエージェントを管理する段階に移行しつつある今、ガバナンスと監査性の確保が課題として浮上している。

 マルチエージェント時代に向けたエージェント制御基盤としてIBMが提供するのがwatsonx Orchestrateの次世代版(プライベートプレビュー)だ。さまざまなAIエージェントを一貫したポリシーで展開できる。

 開発支援パートナーの「IBM Bob」(Bob)は、2026年4月28日(現地時間)に一般提供を開始した。セキュリティ管理機能とコスト管理機能を標準搭載する。ソフトウェア開発のライフサイクル全体(計画、コーディング、テスト、デプロイ、モダナイゼーション)にわたって開発者と連携する。

データ:AI対応データ基盤

 多くの企業でデータがサイロ化され、意味付けがされていない状態にある。最新のデータでエージェント型システムを稼働させるため、IBMはConfluentの買収を通じて「Apache Kafka」と「Apache Flink」(Flink)を基盤としたリアルタイムデータストリーミング機能を、データレイクハウス「IBM watsonx.data」(watsonx.data)と組み合わせる。

 watsonx.dataには、オープンで分散したデータを横断的に扱う「Context機能」(プライベートプレビュー)が追加された。エンタープライズAIがビジネスデータに業務上の意味付けをし、実行時にガバナンスを適用しながら判断を下せるようにする。watsonx.dataの「context」「OpenRAG」「OpenSearch」と、Confluentの「Real-Time Context Engine」を組み合わせて提供する。

 GPUアクセラレーション対応の「Presto」(プライベートプレビュー)も拡張機能として加わる。Nestleが実施した概念実証(PoC)では、186カ国にまたがるグローバルデータマートで、コストが83%削減された。

 加えて「Confluent」「Tableflow」、watsonx.dataの統合が一般提供を開始した。ConfluentおよびFlinkとwatsonx.dataの統合により、リアルタイムのイベントストリーミングとバッチ処理のワークロードを接続する。

オートメーション:インテリジェントなインフラ運用

 AIを事業の中核で運用するほど、IT基盤の複雑性は増す。分断されたツール群やサイロ化したチーム、本来は連携を想定して設計されていないシステム間を人手でつなぐことで、多くの企業は複雑性に対処している。

 こうした課題に向けてIBMが提供するのが「Concert」(パブリックプレビュー)だ。協調的かつ自律的なインテリジェント運用に移行させる。既存ツールを置き換えることなくアプリケーションやインフラ、ネットワーク全体にわたるシグナルを統合し、単一の運用ビューを提供する。

 Concertは次の3つの機能で構成される。

  1. 分野横断的な理解:サイロを解消し、重要な事象を可視化する
  2. 文脈に基づいた意思決定:リスクや依存関係にわたるシグナルの相関付けと、共通の状況認識に基づいて行動する
  3. 協調的な実行:組み込み型のガバナンスと人による監督の下で、洞察からアクションへ移行する

 セキュリティ面では、開発ワークフローにセキュリティ管理を組み込む「IBM Concert Secure Coder」(Concert Secure Coder)(パブリックプレビュー)も提供される。Bobや「VS Code」から利用できる。コードが記述される段階でリスクを特定・優先順位付けし、脆弱(ぜいじゃく)なコードの修正、OS、ミドルウェア、パッケージ、イメージへのパッチ適用などの自動修復を生成する。

ハイブリッド:運用上の主権性

 AIが事業の中核に組み込まれることで、規制対象データや重要インフラ、越境管轄など、機密性が高く複雑な環境でAIが稼働することになる。こうした環境では、コンプライアンスは設定上の選択肢ではなく前提となる。

 IBMは、こうした要件に対応するハイブリッド環境基盤「IBM Sovereign Core」の一般提供を開始した。ワークロードやデータを規制要件に沿った形で自社で管理し、特定のベンダーやクラウドベンダーに依存せず、運用方針を制御する「運用上の主権性」を確保する。インフラの実行階層にポリシーを組み込み、ワークロードの稼働中も継続的に適用することで、規制要件の変化にガバナンスを対応させつつ、ワークロードの可搬性を優先する。

 Sovereign Coreには拡張可能なカタログが含まれ、自社アプリケーションを登録できる。加えてIBMだけでなくサードパーティーやオープンソースの事前検証済みのソフトウェアやサービスを利用できる。サードパーティーのパートナー企業としてはAMDやATOS、Cegeka、Cloudera、Dell、Elastic、HCL、Intel、Mistral、MongoDB、Palo Alto Networksが参加する。基盤技術にはIBM参加のRed Hatが提供する「Red Hat OpenShift」や「Red Hat AI」を採用している。

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