IBM、企業のAI基盤構築を推進 独自エージェント構築や他社連携を強化ITニュースピックアップ

IBMは企業独自のAI基盤構築を支援するIBM Enterprise Advantageの拡充を発表した。業務文脈を反映する新機能や、AWSとSAP連携強化、PearsonとProvidenceの導入成果も示した。

» 2026年05月13日 07時00分 公開

 IBMは2026年5月6日(現地時間)、米ボストンで開催された「Think 2026」で、企業における独自AI基盤の構築や運用を支援する「IBM Enterprise Advantage」(以下、Enterprise Advantage)の新機能を発表した。

 AIプラットフォーム「IBM Consulting Advantage」(以下、Consulting Advantage)の更新内容も公表し、企業のAI活用拡大に向けて、ガバナンスの確保や他社サービスとの相互運用性の強化を重視する姿勢を示した。会場ではPearsonやProvidence、Amazon Web Services(AWS)の担当者が登壇し、AI活用事例を説明した。

AIエージェントによる企業変革を支援 コスト25%削減見込みも

 IBMのモハマド・アリ氏(シニア・バイス・プレジデント兼コンサルティング事業責任者)は、多くの企業が複数AIスタックを横断し、自社業務の統制下でAI導入拡張をする局面に入ったと説明した。

 こうした課題に対応するため、Enterprise Advantageは新機能を2つ追加した。一つは「Context Studio」で、企業データや業務工程構造を踏まえたAIエージェント作成を可能にする。大規模環境下で精度や関連性、性能向上を狙う設計であり、複数環境にまたがるデータやモデル、意思決定管理も担う。デジタル主権確保も視野へ入れる。

IBM Enterprise Advantageのシステム全体イメージ(出典:IBMのプレスリリース)

 もう一つは「Process Studio」だ。多数の標準業務手順書や関連文書からロジックを抽出するAIエージェントを活用し、既存ワークフローをエージェント活用型へ転換する役割を持つ。こちらの提供開始時期は近日中とした。

 IBMは、Process Studioに組み込む予定の社内資産を使った顧客案件の実績も示した。Process Studioへ組み込む予定の社内資産を使い、1400件の業務手順を分析した結果、1000件超の改善余地を抽出した。AIエージェント活用を前提とした業務再設計により、18カ月後には運用費を25%以上削減できる見込みだという。

 人材領域でもAI活用事例を紹介した。PearsonとIBMは、AIエージェントの能力を検証する機能の試験版を披露する予定だ。これは、AIエージェントが特定の業務を担うのに必要な能力を備えているかを継続的に評価する仕組みで、Pearsonの社内AI基盤上で開発した。企業側は、人材の専門知識やAIアシスタント、AIエージェント、各種資産を統合管理できる。

 医療分野では米医療システム大手Providenceの導入事例を公表した。同社はIBM Consultingと連携し、人事システムへ統合した「IBM watsonx Orchestrate」を使ったAI人事エージェントを採用した。IBMによると、導入から約8カ月で採用手続きにかかる時間は90%減少した。求人要件の精度は70%向上し、求人票などの修正作業の負荷もほぼ解消したという。社内異動でも、新たな職務への配置までの期間が平均12日短縮された。空席を埋めるまでの期間や異動にかかる費用も60%減少し、医療現場に必要な人材をより早く配置できるようになったとしている。

 IBMはAI運用基盤の相互接続性強化策も示した。Consulting AdvantageはFedRAMP認証を取得し、米政府機関向けの環境でも利用可能になった。これにより米政府機関は、規制要件やデータ保管条件に対応した形でAI機能を利用できる。

 SAPとの協業拡大も発表した。IBMとSAPは、AIエージェント同士を連携させる「Agent2Agent」(A2A)の相互運用標準に基づき、複数のAIエージェントを組み合わせたサービスの提供に向けた連携を広げた。IBM Consulting Advantage側エージェントは、IBM watsonx Orchestrateエージェントと連携動作するSAP「Joule」エージェントを管理できる。複雑なマルチエージェント運用基盤構築を視野へ入れる。

 AWSとの連携においては、Consulting AdvantageがFedRAMP認証を取得し、AWS GovCloud(米国)でも利用可能になった。これにより米連邦政府機関は、インフラ管理の負荷を抑えながら、セキュリティ要件やコンプライアンス要件に対応したAIや自動化の機能を利用できる。

 IBMは今回の機能追加を通じ、システム基盤の近代化やAI統合、相互接続性確立を後押しする姿勢を示した。AI活用型サービス提供や提携網拡充を通じ、企業側AI導入拡張を支援する方針だ。

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