1つ目のオープン化の流れについては、AppleもMicrosoftと同様、このトレンドには逆らえないと考えたのだろうと思います。そもそもAppleは最初からHTML5推進の立場でした。以前も紹介したと思いますが、iPhoneがFlashを採用しなかったのは、JobsとAdobeの間に確執があったからといわれています。
実際に確執があったかどうかはさておき、この記事の最後に、「そのうち誰もFlashなんて使わなくなるだろう。これからはHTML5が標準だとも述べた」とあります。
HTML5が予定通り立ち上がらなかったこと、App Storeがうまくいったことなどから、ネイティブアプリ寄りの戦略をとっていましたが、もともとJobsも、いずれはHTML5という標準技術に収束していくというのは分かっていたのでしょう。何より、AppleはHTML5の基になった「WHATWG(Web Hypertext Application Technology Working Group)」の立ち上げメンバーでもあります。
Microsoftは、「ユニバーサル Windows プラットフォーム(UWP)」というのを打ち出しています。これは、1つのソースコードから全てのWindows 10デバイス(PC、スマホ、Xboxなど)向けのアプリを作れるというものです。
これとは対称的に、Appleは、MacとiPhone/iPadのアプリを統合しようという考えはないようでした。しかし、PWAによってWebアプリが“ネイティブアプリ並み”になるのであれば、MacとiPhone/iPadのアプリを統合できます。
ただ、それだけだと、WindowsでもAndroidでも動いてしまいます。そこでハードウェアメーカーとしてのAppleの強みが生きてきます。MacとiPhoneだけに搭載する(例えば「A11 Bionic」が搭載したAIアクセラレータのような)ハードウェア、あるいはエコシステムを活用することで、他のプラットフォームとの差別化が可能と考えているのではないでしょうか。
今回、Appleが公開しているSafari11.1のドキュメントには、「Payment Request API」についての記述もあります。Apple Payを標準APIとして実装するようで、PWAアプリ(つまりWebアプリ)からApple Payを利用できるようにするのでしょう。
そしてその仕組みのないWebアプリは使えないようにし、App Storeに代わる(というか包括する)収益源にしようということではないでしょうか。そして、将来的にはApple Payを汎用的な決済プラットフォームにしていこうという意図があると思います。
スマホのシェアは、世界的に見るとAndroidのシェアが約7割と、圧倒的です。日本人は“iPhone好き”なので、世界と逆で7割近くがiPhoneのシェアだそうですが、これは世界的に見て異例なのです(どこまでガラパゴスなのでしょう……)。
しかし、アプリの売上高では、これまではAppleの方が多かったのです。2017年に逆転されそうという話はありましたが、Androidは無料アプリが多いこともありますが、ウイルスが含まれるなど、セキュリティ面の課題があることなどが原因でしょう。
また、iPhoneはそもそも価格が高いので、高所得者層が購入するケースが多く、決済額も大きくなりがちと考えられます。Appleにとって将来の決済プラットフォームを押さえるということは、巨大なビジネスチャンスを手に入れることになるのです。
なお、補足しておきますと、PWAが即座にApp Storeのネイティブアプリを置き換えるということはないでしょう。Appleとしてはユーザーの選択肢を増やし、将来に備えるという意味があると思います。
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