HTML5を巡るGoogle、Apple、Microsoftの戦略の歴史Mostly Harmless(1/2 ページ)

IT巨人3社は、HTML5とどう関わってきたのか。

» 2017年09月07日 07時00分 公開
[大越章司ITmedia]

この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。


最初の予言者はGoogle

 GoogleがHTML5への取り組みとしてPWAやAMPなどの技術を開発していることについては、先日の記事で書きました。「クラウドコンピューティング」という言葉を生み出したのは、そのGoogleで当時CEOを務めていたエリック・シュミット氏とされています。2006年のカンファレンスのスピーチで使ったのが最初といわれています。Googleのサイトに以下のような書き起こしが載っています。

What's interesting [now] is that there is an emergent new model, (中略) We call it cloud computing - they should be in a "cloud" somewhere. And that if you have the right kind of browser or the right kind of access, (以下略)

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 この中で、シュミット氏は「新しいコンピューティングモデルをクラウドコンピューティングと呼ぼう」と提案し、それには「ブラウザまたは適切なアクセス手段でアクセスする」と言っています。つまり、Googleが発想したクラウドコンピューティングは、最初からWebブラウザによるアクセスを想定していたといえます。

 このとき既に、SalesforceやAWSはサービスを開始していましたから、クラウドという形態や仕組みそのものをGoogleが定義したわけではありませんが、ネット上のサーバにWebブラウザからアクセスする形態のサービスに名前を付け、1つのジャンルとして確立させたのはGoogleなのです。

WHATWGとは

 ただ、当然ながらGoogleだけがこの動きに注目していたわけではありません。「Flashにとどめを刺したのは」でも書いたように、インターネットの世界では、プロプライエタリを許容しない空気があったことも事実で、標準技術によるネット利用の方向性としてクラウドが生まれてきたという側面もあります。

 そうした中で、2004年に「WHATWG」というコミュニティーが誕生しました。HTML 4を拡張しようとしないW3Cに反発した民間企業のエンジニアたちが、次世代のHTMLを開発しようとして立ち上げたコミュニティーです。

 これがGoogleのAjaxなどと組み合わさり、後のHTML5につながっていくわけですが、最初にこのコミュニティーを立ち上げたのがWebブラウザ専業のMozillaとOpera、そしてAppleだったのです。

HTML5にコミットしていたApple

 Appleが2007年にiPhoneを発表したとき、Flashをサポートしなかったことは先日書いた通りです。

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 iPhoneの発表当初は、App Storeも存在していませんでした。つまり、ネイティブアプリではなく、Webアプリの利用(つまり、クラウドの利用)を想定していたということです。iPhoneは世界初の“モバイルクラウド端末”だったといえます。そして、JavaScriptをサポートしたフル機能のWebブラウザが搭載されていました。この記事でも指摘していますが、当初からHTML5の利用を想定していたのです。

 当時、世界最先端をいっていたとされる日本のケータイに搭載されていたWebブラウザでは、JavaScriptのサポートは限定的で、独自のJava実装によってアプリの開発環境を提供したネイティブアプリに近いものでした。

訂正:2017年9月19日8時30分 初出時に誤字脱字がありましたので修正しました。「エンジ無題の予定ニア」→「エンジニア」「HTM」→「HTML」

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