Flashにとどめを刺したのはMostly Harmless(1/2 ページ)

かつてPC用Webブラウザの97%以上にインストールされていたFlashの栄枯盛衰を、その運命に決定打を与えたiPhoneの登場とともに振り返ってみます。

» 2017年08月24日 09時00分 公開
[大越章司ITmedia]

この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。


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 ついに、Adobe Sysemsが2020年末で「Flash」のサポート終了を発表しました。かつてはリッチなWebサイトには必須の存在であり、世が世ならHTML5に代わるWeb標準になっていたかもしれないFlashは、一体、どこでつまずいたのでしょうか?

 実は、私が講師を務めるITソリューション塾では、2008〜9年くらいから「Flashはヤバいのではないか」という話をしており、数年前くらいからは、「すぐにはなくならないでしょうが、長期的にみるとどうなるか分からないので、今から作るならHTML5にしましょう」と話してきました。私にとってこの日は、来るべくして来た、という印象です。

 Wikipediaによると、Flashが生まれたのは1996年。ベクターデータを使ったアニメーション再生用のプラグインとして開発されました。アニメーションをピクセルではなくベクター(線)のデータで表現するため、1996年当時の遅い回線でも、アニメーションを送れたのです。

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 この頃、HTMLはまだバージョン2くらいで、アニメーションや動画には対応していませんでした。Webブラウザでそれらを再生するにはプラグインが必要で、Flashはビデオや画面制御の機能を追加しながら高機能化していきます。

 一方でHTMLは、1999年の4.01を最後に進化を止めてしまいました。「HTML5」が勧告されたのは2014年です。その間、進化を止めたHTMLに代わって、先進的機能をWebブラウザに提供してきたのがFlashだったのです。

最初のつまずきはWeb 2.0

 2000年代に入ると、Webブラウザの97%以上にFlashがプラグインとして組み込まれるという状況になり、一企業が提供する技術でありながら、ほぼ標準の地位を得ていました。

 AdobeがMacromedia(Flashの開発元)を買収したのが2005年。それまでAdobeは、W3Cが推進していたベクターフォーマットであるSVGに肩入れしていましたが、Flashが次世代のデスクトップの標準を狙えると考えたのではないでしょうか。Adobeはその後、ブラウザなしでFlashコンテンツを実行できる「Adobe AIR」を発表しています。

 このとき、Microsoftは、慌てて独自のプラグインである「Microsoft Silverlight」を開発しましたが、そのリリースは2007年。遅きに失したといえるでしょう。

 Webブラウザの機能拡張プラグインはFlashで決まりか、と思われた2005〜6年、新たな技術が出現します。「Ajax」と、それを駆使した新しいWeb体験「Web 2.0」です。Web 2.0は、Flashなどのプラグインを使わなくてもFlash並みの(当時はまだ機能的には劣っていましたが)機能を利用できたのです。

 Web 2.0を実現したAjaxは、厳密にいえば新しい機能ではなく、Webブラウザにもともと備わっていた機能をうまく組み合わせて新しいWeb体験を提供できることを「発見」したのです。つまり、その時点で世の中にあったWebブラウザに何ら手を加えることなく利用できたということで、プラグインも必要としない画期的なものでした。Ajaxの機能は、その後、拡張されてHTML5へと引き継がれています。

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