新たなデバイス×デザイン空間で働き方はどう変わる? クリエイティブな「PR Room」の効果はMicrosoft Focus(1/2 ページ)

日本マイクロソフトが、外部との会議や取材などに使う「PR Room」を“クリエイティブな空間”に刷新。新たなデバイスとデザイン空間で働き方はどう変わるのか。

» 2018年03月28日 07時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

 大手企業には、広報部門が管理する部屋があることも少なくない。取材のために優先的に使用できる部屋で、広報部門に隣接していたり、応接フロアの1つの部屋を使用したりといったケースが多い。

 日本マイクロソフトも同様に、「PR Room」と呼ぶ部屋がある。取材対象者の写真撮影の際に「Microsoft」のロゴが背景に写り込むようになっていたり、取材対応時のプレゼンテーションを行いやすいように「Surface Hub」が設置されていたりする。もちろん、「Skype for Business」を使って、遠隔地と結んだ取材もできるようになっている。

Photo 日本マイクロソフトの新たな「PR Room」の様子

 日本マイクロソフトは2018年2月1日、そのPR ROOMをリニューアルした。

 筆者は3月上旬までの間に、3回ほど新たなPR Roomを使用する機会を得たのだが、正直、これまでのPR Roomとは異なる雰囲気に最初は戸惑った。ハイチェア、ハイテーブルを採用しており、これまでのような「落ち着いた雰囲気のなかで取材をする」という環境ではなかったからだ。

 しかし、取材を重ねるうちに少しずつ慣れてきた。取材中に相手が立ち上がってSurface Hubの前に移動して熱いプレゼンを展開するシーンが見られたりするのは興味深く、ハイチェア、ハイテーブルも、取材メモを取る際には書きやすい高さだったりすることにも気がついた。

 日本マイクロソフト コーポレートコミュニケーション本部(広報)では、「全ての取材でこの部屋を使おうとは思っていない。社長や役員の取材など、落ち着いた環境でじっくりと取材対応する必要がある場合には、ソファのある部屋を使用し、テクノロジーを中心とした説明の場合には、通常の椅子とテーブルを配置した部屋で取材を設定したりといったように使い分けたい」(日本マイクロソフト コーポレートコミュニケーション本部の岡部一志本部長)とし、「新たなPR Roomでは、これまでにはない、新たな取材スタイルを模索していこうと考えている。コーポレートコミュニケーション本部にとっても新たな挑戦の1つになる」という。

創造力を刺激する空間で取材にも変革を

 リニューアルしたPR Roomは、米Microsoftと米オフィス家具メーカーSteelcaseの提携で共同展開している「クリエイティブ スペース」のコンセプトを活用したものだ。

 クリエイティブ スペースは、日本では企業の働き方改革に貢献することを目指して、クリエイティブな思考や業務効率性の追求、より良いコラボレーションを生み出すためにデザインされたさまざまなテクノロジーを備えたオフィス環境として、Steelcaseの建築要素と家具にSurfaceデバイスやMicrosoft 365を統合したオフィス環境を提案している。

 そのデザインコンセプトを取り入れたPR Roomでは、立ち上がりやすいハイチェアを採用し、誰もがSurface Hubの画面まですぐに移動して意見が言いやすい環境を実現。座った人と立った人、モニターに映し出された人が同じ目線の高さで議論ができるのが特徴だ。

Photo ハイチェア、ハイテーブルの組み合わせは斬新
ALTALT 左:テーブルには「Steelcase」のロゴが入る / 右:テーブルの中央部にはケーブル類やコンセントを収納
Photo 椅子に座った人、立っている人、画面に映し出されている人が同じ目線の高さになるように工夫している

 さらに、2台の大型モニターを設置するとともに、テーブルを2つに分割したスタイルに設置することで、どの席に座ってもほぼ同じ距離で大型画面にアクセスできるようにしている。Surface Hubの前には、人が通れるスペースが確保され、画面の前に立ちながらの操作がしやすいように工夫されている。

Photo Surface Hubが導入されている
Photo Surface Hubでは資料を映し出したり、手書きでプレゼンテーションも可能

 さらに台形テーブルを採用することで、参加者全員が“Face to Face”で対話しやすい環境を実現している。また、台形テーブルは、中央部の1本の柱で支えているため外側には脚がなく、どの位置でもハイチェアを設置できるような自由度を持たせている。基本は8人までが利用できる設定だが、自由に椅子を足して、参加人数を増やすこともできる。

 色調にもこだわりがある。

 ハイチェアの座面と背もたれには黄色を採用。黄色は光や太陽、植物といった自然の要素を感じさせるとともに、コラボレーションやコミュニケーションを活発化させる要素があるという。自然の色というと、ほかにも緑色や茶色などがあるが、これらが落ち着いた色であるのに対して、黄色は自然を感じさせながら、活発なイメージを与えるのが特徴だ。

ALTALT 左:ハイチェアには活発なコミュニケーションができるように黄色を採用 / 右:予備に設置されている揺れるスツール

 木目を使った壁や、木を連想させる柄のカーペットを採用した床などは、他のグレートーンの壁と融合し、スタイリッシュな雰囲気作りに貢献している。実際、自然の要素を含む環境では生産性が13%向上するとの調査結果が出ているというから驚きだ。

ALTALT 左:壁に木目を使って自然の雰囲気を演出 / 右:もう一方の壁には撮影用に最適なMicrosoftのロゴを用意
ALTALT 左:床には木を連想させる柄のカーペットを採用 / 右:LED照明はほかの部屋と共通

 また、PR Room内には、55型のSurface Hubのほか、「Surface Studio」や「Surface Dial」も用意されている。ハイテーブルとハイチェアを組み合わせているため、Surface Studioのような平面置きをするデバイスでは、椅子に座っても立ったままでも操作しやすい環境を実現しているのも特徴といえよう。

Photo Surface Studioも用意している

 クリエイティブ スペースのデザインコンセプトは、「クラウドとデバイス」×「自然の要素」であり、PR Roomは、まさにそれを実現したものになっているというわけだ。

 ただ、この部屋のコンセプトは「活動的な分散型チーム」とされており、PR Roomに特化して最適化された部屋ではないのは明らかだ。どちらかというと、クリエイティビリティを求められる会議などでの活用に適した作りになっている。しかし、取材の際に立ち上がって対応しやすい環境が作られているのは、これまでのPR Roomにはなかったことだといえる。

 この部屋の特性を生かしながら、取材の新たなスタイルを模索したいというのは、変革に挑戦しつづける同社らしい発想だ。例えば、取材する側もされる側も「終始立ったまま」というスタイルにも挑戦したいという。

 一般に、記者会見の場では、会見終了後に記者が担当者を囲んで取材をする「ぶらさがり」という取材方法があるが、複数の記者がいることや時間が限定されていることもあり、質問も回答も簡潔なものになる場合が多い。時間が限定される取材の場合などに、この新たなPR Roomを活用して、最初からお互いに立ったままで臨めば、ぶらさがりのように要点を短時間で取材することも可能になるだろう。記者による取材とは異なるが、広告企画のように質問項目が事前に決まっている場合や、簡単なコメントだけを得る場合には適しているかもしれない。

 また、取材の事前打ち合わせや企画の相談などにも、このクリエイティブ性を重視した部屋が効果を発揮しそうだ。

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