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» 2018年06月15日 11時30分 公開

Appleは“しない”ことの意味を知っているMostly Harmless(2/2 ページ)

[大越章司,ITmedia]
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 Macを使うとき、ユーザーはキーボードかマウスに手を置いており、画面にタッチするのは面倒です。操作性を考えると一緒にするメリットがありません。OSを統合してほしい人たちは、おそらくmacOSとiOSで同じアプリを使いたい(あるいは提供したい)のだと思いますが、結局それは使いづらいものになってしまいそうです。だから、「MacはiPhoneのような動作はしない」と言ったのではないかと思うのです。

 ここは、大事なところではないでしょうか。信念というか、哲学を感じます。「顧客が望むことでも、顧客のためにならないならサポートはしない」ということだと思います。これこそが、冒頭の林さんの記事にある真の“Customer at the Center of Everything”だと思うのです。

 松下幸之助さんは「客が欲しがるものを売るな、客のためになるものを売れ」と言ったといわれますが、通底するものを感じます。

UIはシンプルでミニマムが理想

 Appleは、Macの前のPCである「Apple II」の時代から、UIには大きなこだわりを持ってきました。そしてそれは、スティーブ・ジョブズ氏のミニマリスト的な考え方が源流にあるのでしょう。

 便利そうな機能をごてごて盛り込むのは愚の骨頂、そぎ落とされ研ぎ澄まされた渾身のUIのみがサポートされるのです(そういえば、ティアオフメニューなんていうのも、Macが最初、ワンボタンマウスでコンテキストメニューのような動作をさせるために使ったのではなかったかと思うのですが、今調べてみても、そういう話は出てきません。これもハードウェアの制限をUIでカバーしようという試みだったのだと思います)。

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 マウスUIとタッチUIというのは、相いれない部分が必ずあります。例えば、マウスを使ったUIで一般的なマウスオーバー(マウスカーソルをある場所に持っていくと、メニューが開いたりする)は、タッチUIでは使えません。タッチでは、その場所を触ったらクリックになってしまうからです。これを「ユーザーエクスペリエンスを損なわずに」統一するためには、相当しっかり考えなければなりませんが、「ちょっと変だけど、まあいいか」でよいなら、簡単です。

 何事も、「要望があるからそれに応える」よりも、「要望があるが、それはユーザーのためにならないからサポートはしない」方が難しいのではないでしょうか。安易にサポートするのに比べ、何倍も調査・検討し、確固たる哲学の下に判断しなけばならず、それをユーザーに納得してもらわなければなりません。失敗すれば、業績に影響するでしょう。どうしても、リスクを恐れる余り、半端なサポートで妥協してしまうかもしれません。

 特にUIに関しては、“Simple is Best”が通用します。昨今のテレビのリモコンを見ていると、これはそのうちフルキーボードになっていくのではないかと心配になります。「機能が増えたからボタンを増やそう」ではなく、ボタンを増やさずに同じ機能を使えるようにするためには、何倍も知恵を絞らなければなりません。Appleには、それが分かっているのではないかと思ます。

著者プロフィール:大越章司

外資系ソフトウェア/ハードウェアベンダーでマーケティングを経験。現在はIT企業向けのマーケティングコンサルタント。詳しいプロフィールはこちら


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