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» 2018年11月05日 07時00分 公開

エンプラこぼれ話:NEC製AIが開発、“バブル崩壊味”のチョコレートを実際に食べてみた (2/3)

[高木理紗,ITmedia]

 「実は、来年(2019年)の5月で平成が終わるということもあり、最初は平成の中から5つの年を選ぼうとしていたのですが、AIで分析しても、年ごとにとりわけ大きな変化は出てきませんでした。そのため、選ぶ範囲を過去60年間に広げ、特徴的だった5つの年を選びました。また、2017年はNECでもAIの運用が本格化した年だったので、『イノベーションの夜明け』としました」(茂木さん)

 制作に当たり、NECでは過去60年間の新聞記事から代表的な600単語を抽出し、その「印象」をAIで分析した結果を基に、とりわけ特徴的だった年の印象をチョコレートの「味」として表現したという。

photo AIを使って味を決めたプロセス(画像提供:NEC)

 具体的には、チョコレートの味の指標として、「甘味」「苦味」「酸味」「ナッツ感」などの7つを定め、NECがその年を表現する「新しい」「解放」「低迷」といったそれぞれの単語を分析した結果に応じて、単語ごとに7つの味のバランスを定めたチャートを作成。その結果を、ダンデライオン・チョコレートのスタッフが、実際にチョコレートで再現した。

 一方、「実際に(コラボレーションの)お話が来たときは、わくわくする一方で、『本当にできるのだろうか』という不安もありました」と語るのは、ダンデライオン・チョコレートで、AIの出したデータを基に、実際のチョコレート制作に関わった伴野智映子さんだ。その不安の通り、開発の過程では、これまでに体験したことのない苦労があったという。

苦労だらけの「チョコレート開発」、そこで制作者が取った行動は……

photo 「苦労があった分、発見も多かった」と語る伴野さん

 同社は、世界各地で栽培されるカカオ豆の選定、焙煎からチョコレートの制作までを一手に行う「Bean to Bar」方式のチョコレート専門店。一般的にチョコレートを作る際は、各産地のカカオ豆の特性をじっくりと見極めた上で、そのおいしさを最高の形で引き出す味を決める形で進める。

 しかし今回は「AIがあらかじめ決めた味の特徴を、実際にカカオ豆を使って再現する」という、通常とは真逆のアプローチで開発を進めることになり、条件に合った味を出せるカカオ豆探しから試行錯誤を重ねた。

 また、通常は1種類のチョコレートを1カ月ほどかけて制作する一方、今回はNECの出したチョコレートのデータを受け取ってから1カ月で5種類のチョコレートを制作するという“スピード開発”が要求されたことで、今までにないアプローチが必要になった。

 そこで伴野さんたちは、実際にオイルショックやバブルを体験したスタッフを交えて綿密な話し合いを重ねるだけでなく、過去にどの豆でどんな味を出したかExcelに記録していた“データ”を掘り起こして活用し、見事に期間内で制作をやり遂げた。

 ところで、今回のチョコレートは、買ったらすぐに食べるのではなく、歴史をかみしめるように「ある程度待つことで、初めて分かる味がある」そうなのだ。

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