本気の働き方改革は、“若手の本音”から始まる――企業を超えた「ミレニアルプロジェクト」を日本マイクロソフトが始めた理由「ツールではなく、企業のマインドを変えていきたい」(2/2 ページ)

» 2018年11月22日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
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 日本マイクロソフトは、2020年までの注力分野の一つに、ミレニアル世代を中心とした働き方改革を掲げている。同プロジェクトは、執行役員の発案を中心にいわゆる“トップダウン”で始まったというが、その背景には、これからのビジネスを見据えた戦略がある。

 「このプロジェクトは、将来への投資という狙いが大きい。若手の自由な発想を次のイノベーションに生かし、その結果として、会社の将来を担う人材にとって魅力的な働き方も実現したいと考えている。

 また、今の若手が成長し、企業の中で意思決定を担うようになる将来のビジネスを見据えてもいる。彼らは、さまざまな企業のツールに触れながら育った世代だ。だからこそ、その視点やニーズは上の世代のそれとは全く違うと感じている。将来、彼らのニーズに合った製品を生み出すためにも、彼らが今の仕事やITについて率直に何を考えているのか知り、新しい発想を生かせる仕組みを今から作っておきたい」(石田氏)

プロジェクトを“継続”することで見えてくるもの

 同プロジェクトは、「Microsoft Teams」の掲示板などを活用し、営業部門やマーケティング部門を中心に徐々に参加者を増やしてきた。現在は、「MINDS」に参加予定の企業から数人のミレニアル世代の社員同士が交流し、将来の働き方について話し合う活動も始まっている。

 手探り状態で成長を続けるプロジェクトにとって、目下の課題の一つは、「できる限り若手が自由にアイデアを出せるような環境を保つ一方、必要に応じて議論の軌道を導き、明確なアウトプットを出せるような仕組みをどう作るか」だという。

 例えば、ミレニアルプロジェクトの場合は、その場の意見をまとめる「リーダー」の社員が全体の状況を把握し、必要に応じてミレニアル世代の中でも経験が長い“保護者役”の社員が、「明確なアウトプットをあくまで現場のアイデアを制限しないように注意しつつ、若手の経験を補うような形で自然に助け舟を出すようにしている」(石田氏)

 また、自然なアイデアや議論を促進するからこそ、多様な意見を形にする困難さも付きまとう。

photo Steelcaseで行われた話し合いでは、実際に現場で若手が感じる課題から将来の理想まで、多種多様な意見が飛び交った

 「ひとくちに『ミレニアル世代』と言っても、その範囲は広く、考えていることはそれぞれ違う。次々と出てくる多様な意見をどうやってまとめていくか、という点で難しさを感じることもある。例えば、『チャットツールを業務に活用すれば、効率が上がる』と言うミレニアル世代は多いが、本当に効率が上がるか見極めるには、効果測定が必要だ。若手が求めるアイデアをいかに上に認めてもらいつつ、納得できる形で実現できるかこれからも追求していきたい

 また、他社のミレニアル世代と交流してみると、これが自社だけの問題ではなく、多くの日本企業に共通する問題だということが分かってきた。『MINDS』の活動が本格化すれば、日本の働き方改革全体に向けた提言にもつなげられるかもしれない」(山本氏)

 新たな世代の台頭を見据えて始まったミレニアルプロジェクトは、「ビジネスにITは不可欠」という状況の中で育ってきた世代の考え方をくみ取ることで、これから加速する世代やニーズの変化を柔軟に受け止め、企業の成長を加速させる可能性を秘めている。短期的な投資対効果や“今すぐ実現できるアイデア”は期待はできないだろう。しかし、今後新たなディスラプターが無数に出てくる業界で、部門に関係なく若手のアイデアや議論を積極的に引き出せる環境を作っておくという意味では、実は長い効果をもたらし得る“生き残り戦略”なのかもしれない。

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