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» 2018年12月21日 08時00分 公開

CSIRT小説「側線」 【最終話】第14話:新生(後編)CSIRT小説「側線」(2/3 ページ)

[笹木野ミドリ,ITmedia]

@CSRT執務室

Photo 虎舞秀人:インシデントマネジャーの志路大河に引っ張られてCSIRTに加入。システム運用のことを熟知している。志路を神とあがめる。CSIRT全体統括とは馬が合わない。関西弁。イケメン

 虎舞秀人(とらぶる しゅうと)と栄喜陽潤(えいきょう じゅん)が話している。志路大河(しじ たいが)と宣託(せんたく)かおるもいる。

 「大出世やと思わん? 俺があの、志路さんのポジションを継ぐんやで!」

 虎舞が興奮して話している。

 「すごいです。今度はメイさんと直接的なカウンターパートナーですね。うまく協調してください」

 潤がやや心配そうな顔で言う。

 「任せとき! メイもいろいろ苦労したせいか、最近はしゃんとしとるわ。それよか、俺も大樹のてっぺんまでようやく来た感じがするなぁ。ほんま、うれしいわ!」

photo 宣託かおる:前任のCSIRT統括であるコマンダーやインシデントマネジャーとは戦友。メイに対しては将来性を感じ、厳しく支えている

 宣託が虎舞に言う。

 「あらあら、すごい上から目線。大丈夫? 調子にのってコケないでね。そっちが無理難題を言い始めたら、相手の部門と交渉するのは私なんですからね」

 志路が口を挟む。

 「海でコケた人にはいわれたくはないわなぁー、虎」

 宣託は赤い顔をしている。

@バー・チャタムハウス

photo 懐柔善成:通称「仏の善(ぜん)さん」。理詰めで話もできるのだが、普段は情緒的に折衝する。落としどころを見つけるのもうまい

 「お疲れさまー」

 懐柔善成(やわらぎ よしなり)と折衷案二(せっちゅう あんじ)が、二人で乾杯をしている。

 山賀が声を掛ける。

 「本当にお二人ともお疲れさま。長かったわねー」

 懐柔が応える。

 「ああ。思えば、親会社の『ひまわりエネルギー』に入社したのが俺の社会人としての始まりだった。会社でベテランといわれる歳になった時、海洋エネルギーに関する新たな技術が社内で発見され、『ひまわり海洋エネルギー』ができた。

 俺はこの会社に出向してからもいろいろな業務を経験したけれど、後半はシステム開発部長で終わるかと思ったら、CSIRTのポジションに任命されるなんてな。波乱万丈で楽しい会社生活を送らせてもらったよ」

Photo 折衷案二:感情豊かで人を転がすことがうまい。しかし、にっこり握手しながらテーブルの下では相手を蹴り倒す技術を持っている。いろいろな部署に顔が広い。定年間近

 折衷が続ける。

 「こっちは最後までITとは無縁の世界で終わったなぁ。ただ、最後にCSIRTで懐柔と一緒に仕事ができた。親会社に同期入社で出向も同じ時期だったのに、初めてだよな」

 「そうだな。そういえば、後継を聞いたか? 俺の後釜は宣託だそうだ」

 折衷が反応する。

 「聞いた聞いた。宣託なら大丈夫だな。ただ、懐柔と違ってシャキシャキと部門を言いくるめないかちょっと心配だな。彼女、江戸っ子だから」

 懐柔が聞く。

 「折衷のところは守社(すず)ちゃんがいるから問題ないな。よく育てたな」

Photo 原則守社:原理主義で融通が利かない。正義感が強いあまり、周りが見えなくなってしまうときがある。同じお寺っぽい名前の明徴をいじるのが趣味

 折衷が言う。

 「育てた、なんておこがましいよ。やる気はあったから、その気持ちをうまく誘導したら勝手に育ったようなものだ。来年度は新しい人を追加するらしいが、どう育てられるかが課題だな」

 「さすが折衷だ。うまいな。まぁ、人材育成については、守社ちゃんは育英さんとも仲が良いので何とかやるだろう」

 懐柔が守社への信頼をにじませながら応えた。

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