可能性から弱点まで――AIのビジネス活用に必要な「5つの視点」編集部が選ぶ、2018年の注目記事5選【池田編】(1/2 ページ)

2018年も終わり、年間ランキングも発表されましたが「ランキングには載らなかったけど、面白い記事はまだまだたくさんあるんだぞ!」ということで、ITmedia エンタープライズ編集部員がそれぞれ、読者の皆さまに推したい記事を5本ご紹介。データ分析周りを担当する池田からは、AIを中心に、思わず「へぇ」とつぶやくような記事をお届けします。

» 2019年01月07日 09時45分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 先日、ガートナーのハイプサイクルでAIが「幻滅期」に入ったことが注目されましたが、2018年もエンタープライズIT業界は、AI関連の話題にあふれていたように思います。過度な期待から幻滅へ……その文字通り、ITmedia エンタープライズでは、AIの可能性を感じさせる記事から、限界を示唆する記事まで、幅広いテーマを取り扱ってきました。

 この記事では、編集部の池田が普段追いかけている「AI」や「IoT」関連で気になった記事を5つご紹介します。まずは「AIの可能性」を感じた記事からです。

スマートスピーカーのビジネス活用、そのカギは「ストーリー作り」

 まずは、2018年に大きな話題になったスマートスピーカーのビジネス活用から。東京・渋谷にある居酒屋「天空の月」が、Amazon Echo Dotを使って行った音声注文の実証実験を取材した記事です。

「Alexa居酒屋」はなぜ生まれた? オーダーシステム開発の苦労とその可能性

 スマートスピーカー「Amazon Echo Dot」に話し掛けて注文を行う“Alexa居酒屋”の実証実験が、東京・渋谷の居酒屋「天空の月」で始まった。居酒屋でスマートスピーカーは活躍できるのか。プロジェクトの裏側とボイスUIの可能性に迫った。


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 開発を行ったヘッドウォータースのエンジニアは、「ユーザーに情報を伝える手段に文字や画像が使えず、音声しか使えないことから、システム開発はシンプルではあるものの、ユーザーにどういった情報を伝え、やりとりをするかというシナリオ作りが一般的なシステムと大きく異なる」と語ります。試行錯誤の末、彼らがたどり着いた結論は……?

 新たな技術をすぐに試し、実験の中で知見をためる――それを愚直に繰り返すことが新ビジネスを生み出すたった一つの方法なのだと思わされます。ぜひぜひご覧ください。

ビジネス課題を「画像認識」にどう落とし込むか?

 続いては、インフルエンザを診断するAIの開発に挑むベンチャー企業のお話です。インフルエンザの初期診断は非常に難しく、その精度は6割程度にとどまっています。しかも、発症後24時間が経過しないとさらにその精度は落ちてしまいます。病院に行ってみたものの、翌日来るように言われて追い返されてしまった……皆さんは、そんな経験ありませんか?

インフルエンザを診断するAI、ディープラーニングで実現へ 医療機器ベンチャー「アイリス」の挑戦

 タイミングの制限があり、精度もそこまで高くはないインフルエンザの初期診断。これをディープラーニングで支援できないか、と挑むベンチャー企業がある。


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 このベンチャー企業「アイリス」が注目したのは、「インフルエンザ濾胞(ろほう)」と呼ばれるインフルエンザ特有の喉の腫れ。一般的な風邪での腫れとは形状や色調が異なるため、熟練の医師は即座に見分けることができるそう。その技をディープラーニングで再現できないか、と開発を行っています。

 画像の識別などに大きな力を発揮するディープラーニングですが、これ以外にも酒造りに活用したりきゅうりの選別に使ったりと、さまざまな事例が出てきています。一見AIと合わなさそうな仕事でも、うまく画像認識の問題に落とし込めば、ディープラーニングで成果を挙げられる――今後はこのようにビジネス課題と技術をつなぐ発想力が大事になるのでしょう。

50年以上研究されている「音声合成」が、ディープラーニングで急激に進化

 続いては、ディープラーニングの少し変わった活用方法をご紹介しましょう。昨今はスマートスピーカーをはじめとして、機械による文章の読み上げが注目されていますが、その“音声”を作り出す技術は50年以上前から研究されてきました。それがここにきて、ディープラーニングで大きく進化しているというのです。

ディープラーニングで急激に進化――意外と奥が深い「音声合成」の世界

 自動音声案内をはじめとして、スマートスピーカーなどでも使われる人工的な「音声合成」。その研究は50年以上もの長い歴史があるが、最近は機械学習によって、急速な進化を遂げているのだという。


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 合成音声の基になる音声を録音するのに20時間以上かかっていた時代もあったとのことですが、機械学習を利用することで、録音に必要なデータを少なくでき、ディープラーニングを使うと30分程度の音声データでも、他人のアクセント情報などを補い、人間の声と遜色ないような合成音声を実現できるのだとか。その詳しいメカニズムについては、記事をご覧いただければと思います。

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