最終回の今回は、クラウドを活用したSaaS型ERPの将来と各社の取り組みに加え、それらを導入する際の成功のポイントをまとめました。
本連載は、過去6回にわたって、SaaS型ERP導入を成功させるためのポイントについて、「導入アプローチ」「コスト」「人、組織」「システム構成」「業務改革(間接材購買/財務経理)」の側面から解説してきました。最終回である今回は、それらを踏まえて近い将来のSaaS型ERPの姿とその導入に向けた取り組み方について解説します。
KPMGがハーヴィー・ナッシュと共同で実施したITリーダーを対象に実施した世界最大規模の意識調査「HARVEY NASH/KPMG CIO調査」によると、テクノロジー関連の主な取り組みへの投資計画について、9割近くが「クラウドに投資している」と回答しています。もはやクラウドは一定の成熟度に達していて、ITリーダーにとって、セキュリティやレジリエンス(対応力、復旧力)に関する懸念はおおむね払拭(ふっしょく)されていると考えられます。
また、クラウドを利用する上で欠かせない(ブラウザ展開先としての)モバイルへの投資もクラウドと同様のパターンをたどっていて、ITの世界では一般的になっています。一方AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)、RPAは、大きな注目を集めているにもかかわらず、大規模、中規模の投資は2割程度にとどまっています。
ERPベンダーのSaaS化の動向および戦略を見ると、SaaS型ERPへのシフトが進み、その動きと並行してSaaS型ERPを軸にデジタル技術を統合した、いわゆる“次世代型ERP”への移行が進んでいることがうかがえます。ベンダー各社の取り組み状況についてまとめました。
2015年発表された「SAP S/4HANA」は、ERPとしては23年ぶりに刷新された製品です。その点以上に、オンプレミスよりも先にSaaS(Software as a Service)形式で提供すると発表された点が注目されました。翌2016年には、実際にSaaS版の「SAP S/4HANA Cloud」の提供が日本でも始まりました。
SAPはこの「SAP S/4HANA Cloud」に対して3カ月ごとに機能強化を行っていて、SaaS型ならではの柔軟性とスピード感を発揮しています。
同社は今後、人工知能(AI)やRPAの機能といった技術を「SAP S/4HANA Cloud」に組み込んでいくことを発表しています。
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