ライオンが実践するデータとコミュニケーションの良い関係――自分も気付かないの本当の欲求とは(1/3 ページ)

日常生活消費財の世界では、コミュニケーションの在り方が変わろうとしている。ライオンが実践するデータ分析を起点とする新しいコミュニケーション手法とは。

» 2019年09月10日 07時00分 公開
[重森 大ITmedia]

 消費者が本当に求めているもの、商品が提供する本当の価値。この2つをより深いレベルでマッチングさせることで、広告効果を高め、ユーザーにより良い体験を届けるためにライオンは日々努力を重ねている――アドビシステムズが2019年7月23〜24日に主催した「Adobe Symposium 2019」の「ディープインサイトの導出と新たなマーケティングアプローチ」というセッションで、その一端を垣間見た。

既存のコミュニケーション戦略では効果を得られなくなっている現代

ライオンの比留間 徹氏(コミュニケーションデザイン部 デジタルコミュニケーション開発室 マネジャー)

 登壇したのは、ライオンの比留間 徹氏(コミュニケーションデザイン部 デジタルコミュニケーション開発室 マネジャー)だ。同社が運営する生活情報メディア「Lidea」の運営や、DMP(データマネジメントプラットフォーム)の開発を担当している。データを扱ってマーケティングの精度を高めるべく研さんを重ねている比留間氏は、「体験価値のあるコミュニケーションの実現を目指している」と語る。その背景には、大きく3つのポイントがあるという。

 1つ目は「コミュニケーション効率の低下」だ。一人の人間が接する情報量はここ10〜15年で500倍以上になったといわれている。それに対して人間が消費できる情報量はあまりにも少ない。自然と取捨選択が行われ、自分に必要な情報にしか触れなくなってきている。

 2つ目のポイントは、「オンライン広告の無効化」だ。バナー広告のクリックレート低下は以前から言われていることだが、最近ではそもそもバナー広告をブロックする機能がWebブラウザに標準装備され始めている。ミレニアル世代以降の3分の2はこの機能を使っているといわれ、デジタル広告の形自体が問われている。

 3つ目のポイントは、「プロダクト自体の均質化」だ。ライオンの主力商品である日常生活消費財の世界では特にこの傾向が強い。プロダクトの平均クオリティーが高まっており、どの会社のどの製品を買ってもある程度満足できる結果を得られるようになってしまったのである。

 「洗濯洗剤はどれを使っても衣類がちゃんと白くなるし、柔軟剤はいい香りに仕上がります。せっけんは汚れを落として、除菌できるのが当たり前になり、食器用洗剤では脂汚れがきれいに落ちます。プロダクトの特徴では差別化ができない時代になったのです」(比留間氏)

 では何を訴求すべきか。その答の一つが、比留間氏らが注目する「体験価値」だ。

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