クラウドストレージかテープかを決める境界線クラウド対テープ【後編】

クラウドストレージにはメリットもあるが、デメリットもあるので必ずしもベストな選択肢とはならない。テープの方が優れている場合もある。どちらを選ぶべきか、その判断の目安を紹介する。

» 2019年12月18日 10時00分 公開
[Stephen PritchardComputer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 12月4日号掲載)では、テープのメリットとデメリットを整理した。

 後編では、テープとクラウドサービスの比較と使い分けるポイントを紹介する。

テープに代わるクラウドの台頭

 4slのモート氏は次のように警告する。「2019年現在において、テープバックアップからの災害復旧は、ほとんどの企業で要求されるレベルのパフォーマンスを実現しない。オンプレミスでもクラウドでもHDDからの復旧を容易に実行できる今、10年前には十分だったものが今では受け入れられなくなっているということだろうか」

 このギャップを埋めるには、フラッシュ、オンラインとニアラインのHDD、そしてテープから成る階層型システムを用いる必要がある。災害復旧には全く異なるアプローチを検討する必要がある。プライマリーとセカンダリーのストレージシステムでミラーリングや同期レプリケーションなどを行うのがその例だ。また、クラウドでバックアップと復旧を行うことも増えている。

 クラウドストレージは一見、テープの代わりになるように思える。ある意味それは真実だ。

 IDCのグッドウィン氏が指摘するように、Acronis InternationalやCommvault Systemsなどのバックアップと復旧ツールの大手プロバイダーやアーカイブベンダーは現在、クラウドベースのサービスを提供しているか、クラウドを保存先として使用できるようにしている。クラウドへのオフサイトバックアップをエンドユーザーに見えないようにするという目的がここにある。

各社のクラウドサービス

 クラウドストレージプロバイダー大手も独自のアーカイブサービスを提供しており、テープの代替メディアとして宣伝することが増えている。

 Amazon Web Servicesは「Amazon S3 Glacier」、Microsoftは「Azure Archive Storage」を用意している。

 「Google Cloud」には「Nearline Storage」と「Coldline Storage」が含まれる。前者は1カ月につき1GB当たり1セント、後者はコールドラインのディープアーカイブに使う場合1カ月につき1GB当たり0.4セントと手頃な価格だ。「IBM Cloud Object Storage」のアーカイブ機能は1GB当たり0.2セントという、業界最安値を実現している。

 だが、どのバックアップ製品もクラウドストレージと直接統合できるわけではなく、同じように機能するわけでもない。これがアプリケーションの互換性と動作の問題につながる。データマネジャーは、ビジネスアプリケーション、バックアップ製品/サービス、クラウドプロバイダーに互換性があり、適切なレベルの保証が提供されることを確実にしなければならない。

 クラウドサービスにもデメリットがある。1つ目は、驚くべきことにコストだ。

 1GB当たりのコストは低いが、クラウドストレージには月額または年額の料金が発生する。これらはあっという間に累積されていく。データのアクセスと復元には「帯域幅」の料金が追加で必要になる。

 ストレージコンサルタントProStorageの計算によると、全ての企業に当てはめるのは難しいものの、最大50TBのデータを長期保存するのであればクラウドストレージがマッチするという。その数値を超えると、スケールメリットはテープに軍配が上がる。これはテープハードウェアの初期費用、クラウド内の大容量データの継続コストを含めてのものだ。

 コストと同程度に実際的なもう一つの要素が、大量のデータをクラウドに移行する時間だ。

 パブリックネットワーク経由のデータアップロード速度は依然として課題の一つだ。中小企業や新興企業の他、クラウドベースのアプリケーションを既に使用している企業は、バックアップかアーカイブをクラウドに移行しやすいだろう。オンプレミスに相当量のデータがある企業は、クラウドストレージを段階的に導入するか、ニアラインディスクとテープと並行してクラウドストレージを実行するのが現実的だ。

 IDCのグッドウィン氏は次のように語る。「クラウドとテープ、どちらかのみを推奨することはない。これらは単独で使用するのではなく、何かと併用する技術だからだ」

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