2020年は「5Gが企業のDXを加速させる年」になりそうだ。その理由や市場の広がりと、懸念される点についても考察してみる。
2020年は、IT分野においてどんな動きが注目されるか。筆者はその最もインパクトの大きいトレンドとして、「第5世代移動通信システム(5G)があらゆる産業および企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる」と予測する。以下、その理由や市場の広がりと、懸念される点についても述べたい。
2020年春、いよいよ日本でも5Gの本格的なサービスがスタートする。データ通信の速度は現行の規格の100倍で、今後10年の産業や社会を支える基盤になる。
5Gが企業のDXを加速させる理由については、下図(図1)がその答えを集約している。この図は、「超」のついた高速大容量・低遅延・高信頼および多数同時接続という特性を持つ5Gが各種IoT(Internet of Things)機器から収集したビッグデータを産業ごとにAI(人工知能)で解析し、それぞれの分野で新たな価値を生み出すという流れを示したものである。
図1では全体を「CPS/IoT社会」と記しているが、これは産業および企業におけるDXの取り組みを表したものでもある。その上で最も強調しておきたいのは、「5Gが企業のDXのキードライバーになる」ということだ。
ちなみに、図1を作成した電子情報技術産業協会(JEITA)によると、CPSとは「Cyber Physical System」の略称。JEITAはCPSを「実世界(フィジカル空間)にある多様なデータをセンサーネットワークなどで収集し、サイバー空間で大規模データ処理技術などを駆使して分析/知識化し、そこで創出した情報や価値によって産業の活性化や社会問題の解決を図っていくもの」と説明している。
そのJEITAが先頃、5G市場の世界需要額の見通しを発表した。それによると、同市場の世界需要額は年平均63.7%増で成長し、2030年には168兆3000億円と2018年に比べて約300倍に拡大する見通しだ。
図2はその内訳を示したグラフで、IoT機器は自動運転車やロボット、ネットワークカメラなどが需要をけん引する一方、ソリューションサービスにおいては製造、金融、流通・物流などが需要をけん引すると予測している。
また、図1の右上にはCPS/IoT市場の世界需要額も記されている。それによると、2030年は532兆1000億円と2018年から2.2倍になる見通し。この中で5G市場がこれから大きく広がっていく格好だ。
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