SAPジャパンが示すDX支援「エコシステム」型協創は定着するか――SAPジャパン福田譲社長に2020年の展望を聞くWeekly Memo(1/2 ページ)

今やIT業界のご意見番的存在でもあるSAPジャパンの福田譲社長に、「2019年の印象と2020年の展望」をテーマに話を聞いた。すると、DXの極意は「エコシステム」にあるとのこと。果たして、どういうことか。

» 2019年12月16日 12時29分 公開
[松岡功ITmedia]

深まった日本企業におけるERP活用の議論

 「2019年は、ERP(統合基幹業務システム)のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けてSAPが注力している『SAP S/4HANA』(以下、S/4HANA)が、日本でも着実に利用されるようになり、日本企業におけるERP活用の議論が深まったと実感している」――。

 こう語るのは、SAPジャパン 代表取締役社長 福田 譲氏だ。今回、「2019年の印象と2020年の展望」をテーマに筆者の取材に応じた。このテーマで取材を依頼したのは、福田氏がSAPジャパンの代表としてだけでなく、いまやIT業界のご意見番的存在でもあると筆者が認識しているからだ。

Photo 筆者の取材に応じるSAPジャパンの福田譲 代表取締役社長

 その福田氏が、「2019年の印象」について端的に語ったのが冒頭の発言である。発言の内容を2つに分けて説明しよう。

 まず「S/4HANAが日本でも着実に利用されるようになってきたこと」については、具体的な実績値は非公表だ。しかし、「ジャパンSAPユーザーグループ(JSUG)」という日本のSAP ERPユーザー会の調査によると、従来のERPからS/4HANAへの移行について「済み」「実施中」「検討中」と答えたユーザー企業の合計の割合が、2018年の65%から2019年は80%超に増加したという。

 もう1つ「日本企業におけるERP活用の議論が深まったと実感したこと」については、JSUGとSAPジャパンによって、日本企業のERP導入に向けた提言「日本企業のためのERP導入の羅針盤〜ニッポンのERPを再定義する〜」を取りまとめ、2019年7月に公開したことを挙げた(図1)。

Photo 図1 JSUGとSAPジャパンによる提言「日本企業のためのERP導入の羅針盤〜ニッポンのERPを再定義する〜」の表紙(出典:SAPジャパンの資料)。JSUGの専用ページで書籍またはPDF版を入手可能

 この提言は、ERPを本来あるべき姿で導入するための指針を作成する目的で先進的な取り組みを推進しているユーザー企業、ERP導入に多数携わってきたパートナー企業、SAPジャパン、そしてJSUGから集まった有識者12人が半年間にわたって率直な議論を重ねたものだ。その結果、これからの日本におけるERP導入の指針を「目的」「導入」「体制」「活用」の4つの軸で提言としてまとめた。

 例えば、ERP導入の目的について4つの提言をしている。1つ目は経営の高度化、グローバル化について。システム導入という"ITごと"ではなく、経営や業務を進化させるプロジェクトと位置付ける。

 2つ目は変化対応力の強化について。変わり続けることを前提にDXを短いサイクルで実行し続けられる環境を作る。

 3つ目は人材育成について。全社業務を俯瞰的に見直す絶好の機会として捉える。また、ERP導入の視点や経験を伝承する。

 4つ目はコスト、生産性について。チェンジマネジメントを推進して業務を標準化、シェアード化するなどの手法で組織構造や人材スキルにメスを入れる。

 この提言では、導入、体制、活用についても言及している。また、全体で130ページからなる冊子(PDF版)には、問題点や失敗談なども赤裸々につづられている。2019年にこうした提言をまとめられたことが、SAP陣営だけでなく日本のIT産業にとっても、2020年へのステップアップにつながるのではないか、というのが福田氏の捉え方のようだ。

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