人工知能の進化がもたらす、社員の集中力向上のメカニズム集中力散逸の原理とその防止策を検討する

オフィスに集合しない形態での業務が一般的になり、新たな課題が顕在化しつつあります。その一つが「集中力の持続」です。人工知能が進化すれば、ナレッジワーカーの集中を属人的なスキルにしない世界が実現します。

» 2020年08月27日 07時00分 公開
[國分俊宏ITmedia]

 われわれはメッセージングアプリやEメールをはじめ、意思疎通のためのチャネルを1日当たり平均400回以上利用しています。一方で、使う度に仕事の進行が途切れてしまっていることを見逃してはいけません。時間に算出してみると40秒ごとに1回、私たちの集中力はそがれているのです。

 コミュニケーションツールからの通知を受けるたびにわれわれの時間は細かく途切れ、集中できない環境が常態化してしまいます。この環境に順応できる社員と順応できずに生産性に悪影響が出てしまう社員がおり、「集中力の持続」は属人的なスキルになっています。中には、絶え間ないメールや電話などの対応はわれわれの知能指数(IQ)を下げ、脳細胞にも悪影響を及ぼす危険性があると警鐘を鳴らす研究者すら存在します。

 元Apple社員で現在はMicrosoftのコンサルタントを務めるリンダ・ストーン氏は、これを「注意力の慢性的な断片化」と呼んでいます。現代の社員は常に別のことを気にしながら業務に取り組む環境下にあります。目の前の仕事に集中できないままでいるのは、持続可能な働き方とはいえません。

 社員の体験改善が経営幹部の優先課題として注目される昨今にあって、企業は人材の労働環境の改善を迫られています。そんな中、人工知能(AI)と機械学習(ML)でこの問題を解決策する取り組みに関心が集まっています。シトリックスは現在、「テクノロジーによって集中力を取り戻せるか」を評価するため、没入型のデモンストレーションとシナリオの構築を進めています。

テクノロジーはタスク中心であるべき

 マッキンゼー・グローバル・インスティチュートの研究によると、現在、社員の就業時間の2割が「必要な情報や情報を持つ同僚を、社内で探す作業」に費やされています。この時間は、ユーザーが利用しているさまざまなアプリやシステムが相互連携していないために発生する、本来であれば不必要なもの。つまり、本来は企業や社員にとって最適なものであるべきワークフローが、アプリやシステムの仕様に拘束されているために生じる無駄な工数なのです。

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