物流DX注目のTech企業が語る、コロナ禍を超えてサービスを提供する意義

日本の物流DXをリードするTech企業がコロナ禍の物流窮迫を目の当たりにして考えたのは、とても人間的な技術展望だった。物流ラストワンマイルの技術動向と併せてこれからの物流の在り方を考える。

» 2021年01月05日 10時00分 公開
[ITmedia]

 データとITの力でラストワンマイルの物流改革を目指すオプティマインド。業界全体のDX推進、物流のトランスフォーメーションのカギを握る技術を追求する同社は物流DXをリードする企業の1社としてどんな取り組みを進めているだろうか。データ分析ソリューションベンダーSAS Institute Japan(以下、SAS)が2020年11月25日〜12月25日に配信したオンラインイベント「SAS FORUM JAPAN 2020」から、オプティマインド代表取締役社長 松下 健氏の講演「ラストワンマイル物流における配車アルゴリズムの最前線」をレポートする。

ミッションは「世界のラストワンマイルを最適化する」こと

 オプティマインドは「世界のラストワンマイルを最適化する」をミッションに、物流業界向けに配送ルート最適化アルゴリズムを研究・開発する、2015年設立のベンチャー企業だ。既にトヨタ自動車、三菱商事、ティアフォー、テラダ倉庫、MTG Ventures、KDDIから約11億円の資金を調達する。同社代表の松下氏は、名古屋大学大学院の博士後期課程で組み合わせ最適化アルゴリズムを研究してきた人物だ。同社は大学発のベンチャーとして経済産業省「J-startup」の認定を受けており、松下氏自身も「Forbes 30 under 30 Asia 2020」に選ばれるなど、高い注目を集めている。

オプティマインド 松下 健氏

 物流業界で語られる「ラストワンマイル」は、物流の最終拠点から、店舗や家庭の戸口といったエンドユーザーまでの最終区間のことを指す。もともと通信業界で使われていた用語だが、物流ではこれをサプライチェーンに置き換えて、エンドユーザーの手元に配送したり、エンドユーザー自身が配送を依頼する店舗までのルートを指すことが多い。同社は既に日本郵便やあいおいニッセイ同和損保など、複数の企業と共同でラストワンマイル物流の改革を目指すプロジェクトを進めている。

 日本郵便とは3年ほどの期間を掛けてルート最適化システムの実証実験を進めており、2020年6月からはその成果を「ゆうパック」の配送ルート最適化システムとして提供している。また、あいおいニッセイ同和損保は自社が持つデータを、安全を考慮したルート最適化に生かす取り組みを進めている。

 「私たちの事業は、ラストワンマイルの課題とルート最適化問題をかけあわせ、どの車両がどの訪問先をどの順でどういうルートで訪問・配送するのが最適なのかを計算するアルゴリズムの開発と、それをもとに現場の方々が使いやすい画面の開発してソフトウェアとして提供することです。ラストワンマイルの配送事業を担う企業が抱える課題の解決を図っています」(松下氏)

簡単ではないラストワンマイルのルート最適化をSaaSで提供

 ラストワンマイルの輸送は多くの企業が課題としているが、実務レベルで利用できる技術がなかなか登場してこなかった。そもそも配送に関するデータが十分でなく、現実の経路に存在する障害や制約条件などが複雑すぎて単純なルート最適化だけでは対応できず、アルゴリズムとして整えるのが難しいとされてきたためだ。

 オプティマインドはこの問題を独自のアルゴリズムを生かしたサービスで解消しようと試みている。以降でその紹介を見ていく。

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